“意識高い系”にリーチ
このあたりの受け止めは、データの詳細な分析で確認できる。
視聴者の考え方や社会的な立場にまで深掘りした特定層別視聴率の動向だ。
例えば企業に勤める「役員・部課長」。いわゆる勝ち組系の人々には、下級貴族の娘で高貴な人の正妻にはなれない「まひろ」(吉高由里子)の悩みは、それほど身に染みるお話ではないようだ。2割近くが3カ月で脱落した。
管理職ではないものの、正規職員も男女とも同様だ。
ところがパート・アルバイトの女性たちは、3カ月で視聴者が増えていた。
「強いこだわりがある」と自認する人々も興味深い。
男性の場合は2割以上が脱落していたが、女性は1割ほど増えている。好きな人と一緒にいられるとしても、「妾」に甘んずることはできないという主人公の生き方など、感ずるところが多かったのだろう。
要は「人生いかに生きるか」と向き合う“意識高い系”の人々に共感される物語なのである。
今回の大河の主演はもちろんのこと、脚本・制作統括・演出・音楽などスタッフの多くが女性だ。その脚本を担当する大石静は、最初の大河は「功名が辻」(主演・仲間由紀恵)だった。山之内一豊の妻が主人公だが、いわゆる“内助の功”の鏡と言われる女性の物語だった。
しかし今回は、夫のアシスタントではなく、自らの意思で生きる女性が主役だ。このあたりに、近年のNHKの経営や編成の方針が反映されていると筆者は感ずる。