トヨタ工業学園の卒業式で語ったこと
今年の2月20日、トヨタ工業学園の卒園式が本社内の講堂で開かれた。同校はモノづくりのプロを育てる企業内訓練校だ。中学を出た人が入る3年間の高等部、職業高校を出た人が入る1年間の専門部がある。学費はなく、給料をくれる学校だ。社長時代から、卒業式には必ず出席していた。そこで、卒業式の間にインタビューすることにした。
彼自身は「卒業生からパワーをもらうことができる日」と言っている。
その前に、現在のトヨタが置かれた環境についてまとめておく。
2023年、トヨタグループの世界販売台数は前年比7.2%増の1123万台で過去最高だった。2位のフォルクスワーゲンは924万台。トヨタは4年連続での世界首位となった。営業利益は4兆円以上となり、時価総額は60兆円を超えた。
だが、豊田章男という人間は、利益が4兆9000億円であっても浮かれたりしない。「ほうっておくと、すぐに昔の、台数や数字規模のトヨタに戻ってしまう」と危機感を口にする。
今回のインタビューはトヨタ工業学園についての話から始まった。
座学ではなく、現場で人の心を学ぶ場所である
私が学園のみんなに期待することはモノづくりの心を持つこと。最後まで諦めずに自分が手を汚して現場で頑張る。そういう気持ちがあれば、知識は覚えますし、技能は身に付きます。
決して諦めずに、最後までやり抜く心の部分を学園で学んでほしい。もう、それだけを言ってます。まあ、これは私ひとりが言っているのではなくて、河合おやじ(正式な肩書 生産現場のトップ)がいつも言っていることです。
工業学園は座学より、現場に入って人の心を学ぶ場所。日本の教育って、私が学生だった頃から知識をどれだけ知っているのか、理屈をどう紐解いていくかを偏重してきたでしょう。しかし、リアルワールドではそうではないと思う。理屈も必要ですが、それよりも、仕事の上では人の心を大切にしなければと思います。