人情喜劇に加えエンタテインメント性豊かな歌謡ショーを再現
【佐藤】そうじゃないとスズ子が安心して東京に戻れないですからね。銭湯にゴンベエや、アホのおっちゃん(岡部たかし)とかがワイワイ集まっているのって、僕の世代から見ると名作ドラマ「時間ですよ」(1970年TBS)みたいな雰囲気で懐かしかったです。人物名がなく「アホのおっちゃん」という役名になのもすごい。そんなの、ドラマ史上初めてじゃないかな(笑)。
【足立】それについても、役名をつけるべきだとか、いろいろ議論しましたけど、現実にはそう呼ばれている人が存在しているわけなので、そういう、名もなき人がいないという世の中にはしたくなかったんです。
【佐藤】そういう大阪らしい人情喜劇味がありつつも、単なる細腕繁盛記にはせず、笠置シヅ子の音楽が入ってきて、エンタテインメント性豊かになっていく。それがまたすばらしかったですね。僕も笠置さんについてはかなり研究してきたつもりでしたが、ドラマの中に乖離と符合があり、「なんか違うな」と思ったら、1週間の最後でこの言葉、この史実を持ってくるんだ! と驚かされることが多かった。良い意味でのマルチバース。もう、冷静な判断ができないくらいに面白かったです。
【足立】ありがとうございます。