もし、水原氏の最初の証言が本当だったら…
もし、こうした方法で大谷の口座から7億円近くの金を盗んで闇賭博の胴元に送金しながら、大谷に何食わぬ顔で親しげに寄り添っていたとすれば、人間とは恐ろしいものである。
大谷のほうも、本当に水原氏の動きに何も気づいていなかったのだとすれば、危機管理が甘いと批判されても仕方ないといわざるを得ない。
私が会見を見ながら思い浮かべたシナリオはこうだ。
大谷は昨年早々、水原氏から多額の借金があることを打ち明けられていたのではないか。そこで大谷は水原氏に「二度とするな」といって、借金を肩代わりしてやったのではないだろうか。
だが、連邦捜査局がマシュー・ボウヤーという南カリフォルニアの闇ブックメーカーを調査したところ、大谷の口座から数回の振り込みがあったことが明らかになってしまったのである。
球界のスーパースターだったピート・ローズは、監督時代に野球賭博に関与していたことが発覚して「永久追放」処分になっている。
自分が賭博に手を出していなくても、その借金を肩代わりしていたことがわかれば、1年間の出場停止処分は避けられないかもしれない。
会見と齟齬が生じれば、バッシングは避けられない
大谷は悩みに悩んだ末に、水原を斬り捨てることを選んだのではないか。大好きな野球を続けるためにはすべてを否定するしか選択肢がなかったのだと思う。
水原氏も、自分が犯した罪で、世話になった大谷を出場停止に追い込むわけにはいかないと考えたに違いない。弁護士を通じて何らかの“取引”があったのかもしれない。
しかし、今後、新しい事実が報じられ、大谷の会見と齟齬が生じれば、アメリカのメディアは挙って大谷バッシングを始めるだろう。
大谷には、ただただ盟友である水原氏の窮地を救ってやりたかっただけなのになぜ? という思いがあるのではないか。
水原氏は「ESPN」のインタビューの中で、借金のことを打ち明けた時、「彼(大谷)は明らかに不満そうでしたが、助けてくれるといってくれた」とコメントしている。
さらにESPNが「大谷は金を借りた相手が違法ブックメーカーだと知っていたのか?」と問うと、水原氏は「大谷は何も知らなかった。私はただ、借金を返済するために電信で送る必要があるといっただけです。彼はそれが違法かどうかは訊いてこなかった」と話しているのである。
私は、この水原氏の言葉を信じたいと思っている。