「時間指定は再配達抑止に効果的」という勘違い

2015年10月に国土交通省が発表した、「再配達による社会的損失は、年間約1.8億時間、年約9万人分の労働力に相当する」という衝撃的なレポートは、当時、TVや新聞でも大きく取り上げられたから、ご記憶の人もいるだろう。

このレポートでは、消費者に対してもアンケート調査を行った。結果、「『後日における再配達の依頼を前提とした不在』が併せて4割」(※レポートから転記)もあったという、これまた衝撃的な報告があった。

本レポート中、「再配達の削減に向けた具体策」として筆頭に挙げられたのが、配達日・配達時間の指定である。

少し考えれば、配達時間の指定が、前述のような配達現場の混乱と無理を招くことは分かりそうなものだが、本レポートの担当者等は気が付かなかったらしい。

ともかく、このレポートを契機に、結果として、EC・通販を利用する消費者の間に、「再配達を防ぐためには時間指定をすれば良い」という認識が広まったと、筆者は考えている。

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時間指定している人が悪いわけではない

また、この認識はさらなる問題を引き起こした。

消費者の中には、「わざわざ時間指定を“してあげた”のに、その時間帯内に配達できない配達員は怠慢だ!」という発想をする人たちが生まれたのだ。

余談だが、筆者が昨年「物流の2024年問題」をテーマに、あるニュース番組に出演したとき、生放送中に受け付けた視聴者からの質問の中に、以下のようなものがあった。

「番組を拝見していると、『時間指定は本当は良くない』と感じ始めたのですが、いかがでしょうか?」

もしかすると、本稿をここまで読み、「私は時間指定をして、実は配達員を困らせていたんだ⁉」と自責の念を感じている人もいるかもしれない。

これは、政府による再配達削減に関する対策周知が間違っていた結果であり、ある意味、あなたも被害者の一人と言える。

こと個人宅への時間指定配達については、誤った情報の拡散によって生じた社会的損失と言えよう。