「同じ値段だったら5%より9%」という選択

まず気になるのが、ストロング系が相次いで発売された2010年前後の業界の動きである。それ以前の主流はアルコール度数3~5%だったのに対し、なぜ7%以上のストロング系が市場を圧巻したのだろう?

「WHOのデータを見ると2000~2009年は、バブル経済の破綻の影響か、アルコールの消費量(純アルコール換算)は男女ともに下降しました。しかし、ストロング系が発売された2010以降は男女ともに横ばい。あくまで私の予測ですが、横ばいになった理由の1つにストロング系が影響している可能性があるのではないかと思います。5%も9%も同じような値段だったら、じゃあ、9%を選ぼうといった感じで、コストパフォーマンスを考えて選択する方も多かったのではないでしょうか?」(吉本さん)

(データ:World Health Organization, Global Health Observatory Data Repository)

なるほど。同じ値段なら、1本で十分に酔えるストロング系がおトクで手に取りやすかったということか。確かにストロング系のロング缶を1本飲めば、相当いい気分になれる。

若い女性をターゲットにしたCM戦略

「ストロング系の市場が拡大した理由の1つに、若い世代を取り込んだことも挙げられます。コストパフォーマンスはもちろん、果実味があり、炭酸で飲みやすいストロング系は、お酒に飲み慣れていない若い人にも“飲みやすい”と感じさせたのでしょう。また、それまでのチューハイは低アルコールが主流だったので、若い世代にはアルコール度数の高いストロング系が斬新かつ、新鮮に映ったのかもしれません」(吉本さん)

撮影=プレジデントオンライン編集部
各社がさまざまなフルーツテイストのストロング系を発売している

“タイパ”(タイムパフォーマンス)を良しとする若い世代にとって、安くて早く酔える、そしてさらにジュースのように甘くて飲みやすいストロング系は、時代に合った格好のアルコール飲料だったのだろう。

発売当時は女性タレントを起用したCMも流れており、その影響もあってか、若い女性がコンビニでストロング系を手に取る姿も多く見かけた。