予感的中のスプリングバレーブルワリー社長就任

2018年から九州エリアの営業リーダー、さらに2021年から福岡と沖縄以外の九州全域を担当する九州支社長に就任する。会社は営業構造改革を進めており、支社長になった井本さん自身も構造改革の仕上げをしたいと模索していた。そんな中、昨年の2月頭に「異動です」と内示を受ける。

「SVBの前社長は、島村(宏子)さんという女性がやっており、その方が異動になったんです。通常は3月に異動内示がありますし、会社の女性幹部で外食経験がある人間は少ないので、次は自分かもしれないと、ピンときました」

その予感は当たり、SVB三代目の社長に就任。東京に戻ってきた。

「スプリングバレーブランドには缶ビールもありますが、そちらは本社がブランドを管理しています。その一方で東京と京都にある店舗はリアルな接点の場所で、商品のテストマーケティングの場でもあります。本社と店舗をつなぐ人材で、マーケ経験もあるということで私に白羽の矢が立ったのでしょう。九州で構造改革をやり遂げられなかったのは残念ですが、これも運命だろうと受け止めました」

撮影=田子芙蓉

これまで井本さんは何を担当してもどこの部署にいても、その代名詞がつくぐらい、仕事に没頭してきた。例えば「ハートランドの井本」「梅酒の井本」「氷結の井本」というふうに。それぐらいのめり込んで仕事をしてきた。だからSVBの社長になったからには、きっと「SVBの井本」となるのだろう。

部下にとっての“あげまん”になりたい

この春、東京・代官山にあるSVB東京はリニューアルを行う。それを機にここを日本のクラフトビールの聖地にしたいと井本さんは意気込む。そして店舗アルバイトや社員含め、約100人の部下たちの“あげまん”になりたいとも。

「私と一緒に仕事をしたことで、成功体験をしたり、幸せな時間を持てたりしたらこんなにうれしいことはありません。そういう意味で私がみんなの運気を上げられる存在になれたらいいなと思います」

また、キリンビールの子会社の中で、短大卒では初めて社長になった。学歴社会が色濃い大手企業で、常にチャレンジをし続け、粛々と努力をし、仕事に没頭してきたことが評価された。女性管理職が13.58%(2023年4月時点)のキリンホールディングスで、出色の存在だろう。

「私は結婚していませんし、子どももいません。でも、結婚、出産などのライフイベントがあっても、仕事を続け、幹部になれるように女性たちを応援していきたい。男女平等というよりも、男性も女性もお互いの適材適所を補完して高め合っていける、そんな会社にしたいと思います」と未来を語った。

(構成・文=東野りか)
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