ボーリング調査への反対は静岡県の信頼性を失わせる
問題はこの「調査ボーリング」だけにとどまらない。
静岡県は昨年5月、「本県が合意するまでは、リスク管理の観点から県境側へ300mまでの区間を調査ボーリングによる削孔をしないこと」とする要請書をJR東海に送っている。
静岡県境手前の300m地点で、川勝知事は「山梨県内の調査ボーリングをやめろ」を唱え続けている。
この問題に対して、山梨県の長崎幸太郎知事は静岡県へ強い不満と抗議の意思を示している。
「調査ボーリングは水抜きだ」という静岡県の主張に対して、長崎知事は「調査ボーリングは作業員の命を守り、科学的事実を把握するために不可欠だ」と否定している。
それだけでなく、「直径12センチの穴を開けることで出る水はほんの微量であり、現在湧水量は少ない。静岡県の懸念はあまりにも抽象的である」と川勝知事と真っ向から対立しているのだ。
流域10市町も山梨県内の調査ボーリングを認めている。山梨県内の調査ボーリングに口を出す川勝知事の主張は、静岡県の信頼性を失わせるとも考えているようだ。
「ボーリング調査反対の科学的、法的根拠を示せ」
今回のモニタリング委員会の初会合で、JR東海は「調査ボーリング」について「山梨県内で山梨・静岡県境に向けて高速長尺先進ボーリングを実施しており、不確実性の低減に向けて地質の確認を行うとともにボーリング湧水の水量・水質を測定し、地下の状況を確認している。
今後さらに県境を越えて静岡県内の地質や地下水の状況を確認する計画をしている」などと説明している。
JR東海の主張には川勝知事の懸念する「水抜き」などひと言もない。
となれば、モニタリング委員会は、これまで県地質構造・水資源専門部会でどのような議論が行われたかも参考にしたほうがいい。
昨年6月7日の県専門部会で、丸井敦尚委員(地下水学)は「調査ボーリングは県境300m付近で止めるのではなく、実際に掘り進め、県境を越えて静岡県内を含めて試料を取って科学分析しなければ、静岡県の水かどうかの科学的な正確な判断はできない」と述べている。
大石哲委員(水工学)も「JR東海の言う通り、調査ボーリングで大量湧水に至ることはなく、コントロールできる」と判断している。
6月9日には、長崎知事が「どこそこの水という法的根拠は何か、そもそも静岡の水とは何かを明らかにしてもらう必要がある。長野県、山梨県が源流となる富士川の水の(静岡県の)利用に対してわれわれも何かいうことはできるのか、この問題は山梨県内の経済活動に影響を巻き起こす懸念がある」と強い怒りをあらわにした。
山梨県内の調査ボーリングを止める科学的、法的根拠を示せ、というのである。