日々に彩りを加えるちょっとしたコツ

大人より子どもの体感時間が遅いのは、感激することが多いからだそうです。年を取ると、多くのことを「まあ、そんなものだ」と思うのが関の山で、一日をだらだらと過ごしているうちにあっという間に1カ月、1年が過ぎているのです。

刺激の少ない、変化のない日々が始まるのは30代くらいからでしょうか。実際、30代から40代向けの本をのぞいてみても、同じような毎日に辟易している人向けの項目がよく入っていることがわかります。

ただ、感性のアンテナを張ってさえおけば、年齢にかかわらず、刺激に満ちた毎日を過ごすことができるようになります。

食事の食材の来し方を想像する、街路樹の葉を手で触る、使ったことがない言葉を聞いたり見たりしたときにメモを取るなど、些細な日常にある楽しい出来事に気がつけるようになるのです。

とりあえず、その日の夜に、その日にあった楽しかったことを走り書きしたり、人に話したりしてください。2週間つづけると、思い返すのではなく出合った瞬間に「おっ!」と思えるようになります。その日一日を、楽しく過ごせるようになるのです。

「長生き」が目標の人生はむなしい

母が57歳でこの世を去ってから数週間後に、遺された父が色紙に書いた言葉があります。「去ることを待たれて去る人は、去ることを惜しまれて去る人より、ずうっと幸せなのです」

去ることを待たれている人は「まだ死なないの?」と思われてしまうほど長生きをする人。去ることを惜しまれて去る人は若くして亡くなる人、または人気絶頂で引退したり、亡くなったりする人と考えてもいいでしょう。

名取芳彦『達観するヒント もっと「気楽にかまえる」92のコツ』(三笠書房)

「惜しまれて去るうちが花」とおっしゃる人がいますが、孫たちの成長を見られずに逝った母よりも、父は生き長らえ年を取って孫と遊べる自分のほうが幸せだという感慨を述べたのです。

たしかに、長生きできるのは幸せなことです。しかし、長生きするだけが目標になってはむなしいでしょう。

若い人にアドバイスしたり、老いても楽しく生きる姿を見せたり、チンギス・ハーンが言ったように「あとから来る者のために泉を清く保つ」など、長生きするからできることも付け加えたいものです。

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