なぜ、サタン(悪魔)である朝日新聞にネタ提供したのか

この動きを通じて、旧統一教会がいかにカルト的思想のなかで信者らが行動しているのかが浮き彫りになります。教団の中では、アベル(教団の上司)という存在はより神様に近い存在であり、その指示は絶対ということになっています。「カラスが白い」といわれれば、現実は黒くても、それを信じて行動しなければなりません。特に今回のような重要事項に関しては、教団側の許可なくてはできない行動です。

それがよくわかるのは、これらを報道してきた先が、過去にサタン(悪魔)の手先機関として名指ししてきた報道機関だということです。

最初に報じた朝日新聞に関しては、筆者も信者時代に、旧統一教会批判の急先鋒に立つ“サタンの手先となる報道機関”として教えられてきました。次に今回、信者らが取材に応じたのはTBSでした。かつて同局は旧統一教会の信者らによる霊感商法や合同結婚式などの報道を積極的に行い、教団は報道機関のなかでもトップ級のサタン的存在とみなしていました。筆者も当時筑紫哲也氏がキャスターを務めた報道番組「NEWS23」(TBS)に対して、アベル(教団の上司)から抗議するよう指示されて、電話を何度もかけたことがあります。

写真=iStock.com/winhorse
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教団が、背後に「共産党や左翼がいて教団を操っている」と教えるサタン側の出先機関としてみてきたところに、信者らが勝手に情報を流すことはあり得ません。しかし、教団の上の指示があれば、それまで「サタン」と罵っていた存在であっても一転、手を結ぶ行動に出るのがこの統一教会なのです。朝日、TBSのような忌まわしき存在でも、目的達成のためにともに敵(今回の盛山文科相)に対しては攻撃を行う。まさにカルト思想の本質を見た思いがしました。

旧統一教会と関係を少しでももった議員は常に暴露リスクにさらされることになります。大臣などの要職にも就きにくくなる。気の毒ですが、それはすべて教団がどのような組織であったのかを見誤ったからに他なりません。自業自得です。

今回もそうですが、議員の側に記憶がなくても、教団側は組織としてあらゆる場面で写真や文書を残しますので、言い逃れできない状況に相手は追い込まれます。

盛山文科相のケースのように教団は選挙前に、推薦確認書を提示し署名をさせようとします。そして教団関係者と共に親密な関係にみえる写真をパチリと撮る。それをもとに、信者らに議員への投票を呼びかけます。

信者時代の筆者は末端の支部に属していましたが、自民党の国会議員や世界各国の要人たちが文鮮明教祖と握手をしている写真やビデオを見せられて「彼らは統一原理を受け入れて、文先生をメシヤとして受け入れている」と言われ、「統一原理による神の国実現は近い」と思い、モチベーションを上げながら布教活動やモノ売りの活動を必死にしました。

政治家など要人と写真を撮り、証拠を残すのは、教団の常套手段の一つといえます。議員や事務所は記憶が曖昧かもしれませんが、教団側はやりとりの証拠を残し、写真も撮るので記憶は鮮明です。それをもとに今回のように、情報を出すのです。だから、「記憶が定かではない」といった言い逃れは、まったく通用せず、自らの足をすくわれることになります。