「JAM Project」準メンバー渾身の「図鑑」
「ブラジルの特撮ヒーロー界のカリスマは?」と問えば満場一致でその名が挙がるのはヒカルド・クルーズさん(42)だろう。2005年より日本のアニソングループ「JAM Project」の準メンバーとして影山ヒロノブ、遠藤正明らアニソン歌手の大御所らとともにマイクを握るクルーズさんは、日本でも特撮・アニソンの世界で名が通っている存在だ。
プロの歌手となるずっと前から特撮ヒーローを愛するクルーズさんは、昨年新たなビジネスとして出版社モズを設立した。
刊行第1弾として今年1月に発売したのが『決定版ジャスピオン図鑑』だ。オールカラー全184ページの本書は特撮テレビドラマ『巨獣特捜ジャスピオン』の世界を余すことなく紹介した一冊で、ジャスピオンをこれほどまでに掘り下げた書籍は日本にもない。
ずしりと重いハードカバーを開くとドラマ全46話の各エピソードの解説はもちろん、ブラジルで製造販売された関連グッズも紹介するなど多角的に作品の魅力をひもといている。さらに読み応えがあるのが本書の独占インタビューだ。日本の俳優、主題歌歌手、スーツアクター、特殊効果担当者のほか、ブラジルからは後編で紹介するかつての配給会社社長、吹き替え声優などの声が紹介されている。
東映から未公開写真1000点の提供を受ける
「全部で4000部刷りまして、そのうち1100部をクラウドファンディングで販売済みです」とクルーズさんは語る。すでに出版経費の回収はできている。
日本の東映株式会社から出版権を得て制作された本書がブラジル人ファン垂涎の一冊となっているのは、当地で未公開の写真が満載だからだ。
「1985年放送のジャスピオンって実は日本では人気がイマイチだったんですよね。東映さんには何度もお願いして古いスチール写真を探してもらい、見つかった1000点ほどの写真を提供してもらいました」
未公開写真まで集めて作った一冊。こだわりの理由を尋ねると「僕の人生の道筋を築いた特撮の魅力をブラジルのファンと分かち合いたいんです。やっつけ仕事じゃできませんよ、こんなこと!」と情熱はマックスだ。
今年は第2弾として『世界忍者戦ジライヤ』の図鑑を発売予定。クルーズさんのこだわりがブラジルでの特撮人気に深みを与えていきそうだ。