「部下へのフィードバックに躊躇」管理職の57.0%
仕事の忙しさに加えて部下の育成に悩んでいる管理職も多い。同研究所の「管理職意識調査(部下へのフィードバック実態編)2023年10月6日」によると、部下の育成に悩んでいる管理職が54.3%と半数以上に達している。また、フィードバックする際に7割以上の管理職が「部下に成長してもらいたい」と願っているが、フィードバックすることに躊躇したことがあると答えた管理職が57.0%もいる。
その理由で多かったのは「部下の反応に対して不安があるから」(39.9%)、「適切な伝え方がわからなかったから」(37.0%)、「自分が本当に正しいかに自信がなかったから」(29.0%)――の3つである。
管理職自身も部下とのコミュニケーションを不安に感じている。とくに最近は指導のために叱ってもパワハラだと言われかねず、部下の対応には敏感になっている。そうした管理職に同情するのは前出の建設関連業の人事担当者だ。
「10年前は当社でも『お前、仕事やる気があるのか』と叱りつける根性論の管理職がはびこっていたが、今は部下に気を遣う管理職が増えている。今の新人は大体叱られたことがない人たちが多い。たとえば、取引先から電話の応対が悪いというクレームを受けて、数人の新人を叱りつけた上司がいた。ところがそのうちの新人の1人が『僕は悪くないのにどうして一緒に叱られなければいけないんですか、人格の否定です』と文句を言ってきたことがある。上司には『今の若い人は個人意識が強いので関係のない人と一緒に叱るのはまずいよ』と注意したものの、管理職も昔と違って叱り方も考えないといけないのは大変だと思う」
管理職も人間だから、ときには感情的になるのは致し方ないのかもしれない。人事担当者は「何度言っても失敗を繰り返す新人に思わず『お前はバカなのか』と言ってしまった上司もいる。パワハラなどハラスメント研修はやっているが、つい感情的になってしまう管理職もいる」と語る。それがきっかけで離職されると管理職が責任を問われることになる。
感情的になってしまうのは、そもそも自分の仕事とマネジメントの両方をこなさなくてはいけない日本の管理職の構造的な問題に原因があるかもしれない。
新人の指導が不完全のために早期離職を促し、パワハラまがいの言動でさらに離職を誘発するという構造的矛盾の解決ができなければ若者の離職問題は今後も続くことになる。