自家用車があれば、職住近接しなくてもよい

しかし、課題はまだある。たとえば、福島第一原発周辺はもともと原発の交付金があるので小さな町村が今も残っているのだが、これらを合併して従来の境界にこだわらない地域づくりをすればより未来志向になるのに維持し続けている。

三陸沿岸でも防災に強い町づくりが大事なのに、従来の町を再建して、それを巨大な堤防で囲むという建設的とはいえない復興をしているから、地域は衰退するばかりだ。

それでは、能登半島をどうすればよいかといえば、高齢化が進み人口が激減している限界集落をそのまま再建しても無駄である。

そもそも、農村・漁村の小集落での分散居住は、自家用車がない時代に職住近接のためにやむを得ずそうしていただけである。昔は、工場労働者は工場の近くの社宅に住んでいた。

しかし、自家用車があれば、職住近接の合理性はない。むしろ、日常生活、教育、医療や介護、保育を含む福祉などの水準を上げるには、そうした施設を利用しやすい単位で集住するのが賢明で、農作業をするときに車で出かければよいことだ。

全国の一般診療所は約10万カ所、歯科診療所やコンビニはそれぞれ約6万カ所しかないのだから、人口1000人を維持できない集落はかなり不便な生活を強いられざるを得ないのである。

人口1万2000人足らずの珠洲市には、小学校が9校あるが、全国平均では人口6000人で一学区だから思い切った統合が望ましい。

農村や漁村は景観地区として厳選して保存

また、農水漁村の職住近接は、崖崩れや浸水など危険な土地での住まいを強いていたが、これは基本的には解消すべきものだ。津波が予想される土地で、高齢者や病人、子どもを中高層の建築以外に住ませておくのは危険である。

もちろん、美しい農村や漁村を観光資源として限定的に残すのはよいことだ。そうするのであれば、建築規制などをしっかりしてレベルの高い景観地区を形成すべきだろう。ヨーロッパや中国などと比べても、日本の歴史的景観の保全は中途半端だ。対象を絞り込んで中身の濃い保存が望ましい。

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道路もこれまでの路線より安全性が高く、景観が優れたものを精選して確保するのが正しい。地域振興では、通常の産業振興、地域振興策に加えて、特区としての規制緩和を大胆に行うべきだ。

たとえば、加計学園問題で話題になった獣医学部は経済波及効果がある。愛媛県今治市に創設された岡山理科大学獣医学部はたいへんな人気だ。能登半島にもうひとつつくれば確実に成功するだろう。