「最初にやるべきこと」を決める

「矢印思考法」は、「システムシンキング」という概念を具体化した方法のひとつです。

これは、ピーター・M・センゲ氏の『学習する組織』(英治出版)で世に広がった考え方で、物事全体を俯瞰ふかんしながら、そこにある要因と要因の因果関係を正確に把握するという思考法です。

同書の中でも、因果関係を図にして全体を構造化する手法が紹介されています。

たとえば、新入社員が「問題がたくさん発生して、どこから手をつけていいかわからない!」と悩んでいるケースがあるとします。

その場合、まずは「問題」をとりまく全体像を広く見ながら、複数ある「問題」の重要度、関係性、優先順位などを序列化し、それにより「最初にやるべきこと」を決断します。

それができれば、その人はシステムシンキングの思考法が身についているということになります。

渋沢栄一がヨーロッパ視察で得た感想

これと正反対なのが、いわゆる「木を見て森を見ず」というタイプの人。

物事を断片化したピースとしてしか捉えることができませんから、いつも目の前の情報に振り回され、いつまでたっても問題の本質にたどりつけないのです。

NHKの大河ドラマ『青天を衝け』で注目された渋沢栄一は、システムシンキングができていた典型的な人物の一人です。

彼は江戸末期に幕臣として欧州を視察しますが、ほかの人たちが「橋が立派だ」「街並みが美しい」と、いわば「森」を見ずに「木」だけを見て感動していた中、ただ1人「株式会社の概念」「銀行という金融システム」といったように、ヨーロッパ社会の全体像をシステムとして捉えていたのでした。

写真=iStock.com/Eva-Katalin
「木を見て森を見ず」では本質にたどりつけない(※写真はイメージです)

頭がいいといわれる人は、問題をより大きな問題の一部として捉え、ほかの要素とのつながりを考えることを習慣化しているのです。