劣等感という心の病を治せる最高の医者は、あなた自身

こんなふうに、どんなに羨ましいと思っている人でも、傍目には思いも寄らない、とんでもない問題を抱えていることがあるのです。

偉大な経営者や学者、華やかな芸能人やアーティスト、人格者と崇められる作家や高級官僚……。成功している人でも、精神的な問題や、あるいは家族に問題を抱えて苦しんでいる人は多く、名声を得たら得たで、お金持ちになったらお金持ちになったで、それぞれに問題はあるのです。

現に、マリリン・モンローやマイケル・ジャクソンは、世界中の人から愛されながらも、薬物に依存するなどの心の苦しみがあったわけです。

写真=iStock.com/Conchi Martínez
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幸福感を得られるかどうかは、まさしく自分で自分を認められるかどうか、自分次第の問題なのでしょう。

逆に、傍目には不幸に見えるような境遇にいる人でも、「自分は幸福になれる」、あるいは「毎日、気楽で幸せだ」と確信していれば、そのとおり、その人の人生は幸せなのです。幸せになるために、医者の診断はいらないのです。

「自分が幸福になれると思う程度だけ、幸福になれる」

「人間は自分が幸福になれると思う程度だけ、幸福になれる」

こう言ったのは、独立宣言で知られる第16代アメリカ合衆国大統領、エイブラハム・リンカーンです。

彼は生涯で2度事業に失敗し、5度も選挙で落選し、恋人を死で失ったのち最悪の妻と結婚し、うつ病を何度も経験し、その最期は凶弾に倒れ帰らぬ人となった――アメリカ合衆国の歴史上最初の大統領暗殺事件でした。そして、アメリカで最も尊敬される大統領でもありました。

リンカーンは、前述のように強度のうつ病を何度も経験し、側近は彼が手に取らないように、拳銃を隠しておいたという逸話があります。

そんなリンカーンでしたから、うつの状態で暗いことばかり考えてしまうときこそ、自分を励ますために、「自分が幸福になれると思う程度だけ、幸福になれる」と自分に言い聞かせ、自分を激励し続けたのだと思います。

そのおかげで、偉業を成し遂げることができた。そうした一片の真理がある言葉だから、時代や国を超えて読む人の心に響くのでしょう。

聖書などと同じですね。日本へキリスト教が伝来した当初は、日本人はポルトガル語などで聖書を読むことができず、もちろん日本語の翻訳書もないにもかかわらず、どうしてあんなにもイエスを信じることができたのでしょう? それはイエスの心が時間や空間を伝わり、信じたいと思う人の心に入ってきたからです。