会社を辞める原因は自分の「存在理由」
経営トップの直接参加が難しいなら、人材採用を重く見る企業の体質づくりが大切だ。「来る者は拒まず、去る者は追わず」では、既存社員が「自分たちもそう見られているのか」と捉えてしまい、モチベーションにも影響する。
大企業であればなおさら、採用担当者は経営者と一心同体、自社への思いを熱く語れなければ務まらない。仕事で“やらされている”感を漂わせていたら、それが応募者に伝わってしまう。
少なくとも、自社の魅力や入社後の将来像をきちっと捉えていないと、応募者は集まっても内定が出ないか、採用段階で辞退されてしまう。こうして、知らぬうちにいい人材を落としていることもしっかり考えるべきだ。
新卒に限らず中途でも、入社後にその人をどう育てるかがポイントだが、多くの採用担当者は肩書と頭数だけそろえて現場に投げたままで、こうした意識が希薄だ。
採用担当者は、まず自社にふさわしい人材とは何か、今まで育ってきたのがどういう人材かを把握し、そのうえで一流大卒・一流企業出身者といえど本当に育てられるのか、活躍するフィールドがあるのかを吟味すべきだ。畑違いの人材を採用する際は、受け入れる体制があるか否かも重要である。
やる気もなく入ってくる人などほとんどいない。しかし、新しい環境で最初から実力を発揮できる人は、まずいない。「お手並み拝見」「できて当然」という周囲の視線や、見えない嫌がらせをされる可能性もある。半年ぐらい経って、周囲から出てくる言葉が「あいつ使えないよね」。転職者は、そういうことはすぐ肌で感じ取る。人が会社を辞めるのは、仕事が厳しいときではなく、自分の存在価値がなくなったと感じたときである。
1957年生まれ。東京大学教育学部附属高校在学中にニューヨーク州立高校へ留学。武蔵大学卒業。ヤナセ等を経て独立。人事業務20年以上、面接経験1万人以上。著書に『「できる人」「できない人」を見抜く面接術』ほか。