内向的で大人しいタイプと、外交的かつ攻撃的なタイプとに大別

さらにASDの気質を対人関係に焦点を当てれば、以下の4つのタイプになるようだ(以下、webサイト『みんなの障がい』より引用)。

高木瑞穂『ルポ 新宿歌舞伎町 路上売春』(鉄人社)

・孤立型――周囲とコミュニケーションをとろうとせず、自分から孤立する
・受動型――集団の中で人と関わろうとするが、自分からは関わりにいかない。命令されやすく、流されやすく、自分の意見をもてない
・積極奇異型――人との交流に積極的で、人との距離感が誰にでも近すぎる。自分の話したいことをずっと話し続ける
・尊大型――自分の主張を一方的に押しつけて、まわりを圧倒しようとする。高圧的な態度でふるまう

つまり孤立型・受動型のように内向的で大人しいタイプと、積極奇異型・尊大型のように外交的かつ攻撃的なタイプとに大別される。

「私は売春に救われた」

琴音に照らし合せれば、一旦は約束を好意的に了承する――のちに容赦なく反故にする――といった行動に表れているように、後者(外交的かつ攻撃的なタイプ)のように思われる。

琴音が語った「街娼になったきっかけ」はひとつの事象にすぎない。むしろASDの症状のひとつである「こだわり行動」が、多分に外交的で攻撃的な琴音と、セックスワークとを結びつけたのではと思えてくるのだ。

写真=筆者提供
大久保病院前の立ちんぼ。周囲には買春目的の男性だけでなく、ギャラリーも集まる

「でもさあ、その私がこうやって自立して、仕事のメインは売春だけど細々とでも舞台もやってるのって、すごいよね。うん、こんなにいい仕事ないと思う。学も教養もなく手っ取り早く稼げるし」

自分の天職を見つけた彼女はまばゆいばかりに輝いていた、というのは言い過ぎかもしれないが、いまを照らして「私は売春に救われた」と語る姿は、過去を話すときよりずいぶん希望に満ちていた。(後編に続く)

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