注目を集める「リテールメディアの本命」

それほどAmazon広告が脚光を浴びているのは、リテールメディアの本命として注目度が高いからだ。近年、日本国内でも新たな広告市場として関心が高まっているリテールメディアだが、日米では市場の趣がやや異なることは第2章で解説した。米国リテールメディアの主戦場はECだ。米ウォルマートや米ターゲットといった大手小売りもEC事業に投資を強化しており、そのECサイト上で広告事業を展開する。そのためAmazonとウォルマートなどの既存小売りの広告事業は、機能やサービスの特徴が極めて近い。

「Amazon広告がリテールメディアの本命」という表現に、やや違和感を持たれる読者もいるかもしれないが、日米の市場の違いにあることをご理解いただきたい。むしろ、ECという強力な武器を持ち、売り場直結型の広告プラットフォームであるアマゾンは、日本の小売企業よりも収益性の高いリテールメディアをすでに実現できていると言える。日本の小売企業が手掛けるリテールメディアにとっても、将来的にECは欠かせない。アマゾンに学ぶことは多い。

写真=dpa/時事通信フォト
2024年1月18日、スイス、ダボス:ダボスのアマゾンパビリオンの前を歩く人々。

また、広告が売り上げと直接的に結びつきやすく、広告効果が明快だからこそ、広告主の投資を促しやすい傾向にある。Amazonで商品を販売する企業は、Amazon広告の仕組みを理解することで、より成果に結びつきやすくなる。まずはAmazon広告の強みを2つに分解して解説していこう。

「アマゾン広告」にある2つの強み

デジタル広告サービスの開発には「広告の配信面」と「広告配信の仕組み」の両方を備えている必要がある。まず、ECサイトがそのまま広告の配信面になるのはEC事業が本業であるAmazonの強みだ。Amazonのトップページはもちろん、Amazon内での検索結果一覧や商品ページ、決済完了画面など、さまざまな箇所に広告枠を設けている。さらに動画配信サービス「Prime Video(プライムビデオ)」や、買収したゲーム動画サービス「Twitch(ツイッチ)」など、動画広告の配信面の開発にも積極的に投資をしている。

「認知・(商品の)発見から、運用型、リマーケティング(追従型)などのパフォーマンス広告までを組み合わせた(Amazonの)広告戦略が、長期的に(広告主の)ブランドに大きな効果をもたらすケースが増えている」と米アマゾン・ドット・コムのグローバル広告営業担当副社長であるアラン・モス氏は説明する。

広告在庫も潤沢だ。デジタル広告の在庫は、利用者のアクセスごとに発生する。検索キーワードに連動して広告を表示する「検索連動型広告」はその代表例。多数の利用者を抱え、頻繁に検索行動が行われなければ、広告の表示回数は少なくなる。その観点では、Amazonの利用者はすでに主要な広告プラットフォームと比肩する規模になっている。