人の意見を無視してもうまくいくのは一握りの天才だけ
では、私的自己意識が強ければいいのか、というと、必ずしもそんなことはありません。「人の意見に左右されない」傾向が、「自分のことしか考えない身勝手さ」につながると、単なる「自己中心的」として批判の的になるでしょう。
何事もバランスが大切です。とはいえ、その「自分と他人」とのバランスは容易ではありません。言い換えるなら、人の意見を聞き入れる柔軟性と、人の意見に左右されない強さのバランスです。
たとえば、何かを判断するときに、誰の意見をどこまで取り入れて、自分のアイデアをどこまで生かすのか。
よほど才能に自信があるなら、人の意見は無視してもうまくいくことがあります。実際に、学術でもスポーツでも、人の話を聞かない天才に人がついてくるのは、格段の才能があるからだったりします。
しかし一般的には、他者の意見を尊重しながら、他者と共に生きる道を探していくことが賢明です。
ドジャースに移籍して、メジャーリーガーとして史上最高の契約金1000億円を獲得した大谷翔平選手は、当時周りから批判された二刀流を貫く強い意思がありました。しかし、それだけではなく、チームや周りへの配慮も欠かせない人柄が人気を博し、一流を超えて世界的な「超一流」の選手として多くの人に迎え入れられるまでに成長しました。
時には自分の意思を大切にして、時には人の意見に耳を傾ける――折衷案が必要なこともあります。
そんな「自分と他人」とのバランスに迷う人は、自分が理想とする自分と他人のバランスを「自分30、他人70」といったように、スコア化してみるのがおすすめです。たとえば、「自分60、他人40」のバランスが心地いいという人がいます。
また、別の人は「自分50、他人50」でないと落ち着かないかもしれません。理想の比率は、人によってまちまちです。
「自分」と「他人」の理想的なバランスを考える
問題が生じるのは、理想と現実にギャップがあるときです。本当は「自分70、他人30」が理想で、自分の意見が通りやすい環境が好みなのに、「自分30、他人70」の環境を強いられたら、耐え難いストレスを感じるでしょう。
逆に「自分90、他人10」が許される環境でも、「独りよがりになっていないかな?」と心配になるかもしれません。
そして、仕事でもプライベートで努力してもうまくいかないとき、かなりの確率で、理想と現実の状態にズレがあることが、これまでの研究でわかっています。