成果が世に還元されるのに時間がかかるから大学を辞めた
これは私が若い頃、学術機関での研究職を辞めた理由の1つでもあります(15年ほどビジネスの現場で実証研究を積み重ねて、今は大学にも所属しています)。
基礎研究は数年かけて1つのテーマを研究しても、それが社会に還元されるのに10年以上かかることも、ざらです。
最初は気になりませんでしたが、長年研究するほど、自分は「人の笑顔を見ることが好きなのに、随分と長く待たされるな」と感じていました。
もちろん、じっくり時間をかけてやる研究も素晴らしい意義があるため、どちらがよい悪いではありません。
ただ、その人がそれを好きかどうかは、その人の役割にも関係してきます。
大切なので、何度も言います。
フォーカスするのは、仕事ではなく、自分の感情なのです。自分の感情を自覚しながら日常生活を送ると、少しずつ、しかし着実に、やりたいことに近づいていきます。
人の笑顔を見るのが好きだから、銀行員から幼稚園教諭へ
最後に、私の知り合いの例を紹介しましょう。
ある幼稚園の有名な男性の先生で、もともと海外で銀行員をしていました。
その方は、手品は披露するし、ダンスもうまく、子どもたちに大人気です。今では、幼稚園の先生が彼の天職としか思えません。
しかし、銀行マン時代の彼は、多くの収入を得ていた反面、心身はボロボロ。彼の感情は、銀行の仕事では満たされていませんでした。
そんなある日、「人手が足りないから」と幼稚園にスカウトされたのです。普通に考えれば、「自分にはとても……」と辞退しそうなところです。
でも彼は、自分が「人の笑顔を見るのが大好き」で、「人の成長に貢献するのが好き」なことを知っていました。
幼稚園の仕事が、自分の感情を満たしてくれると直感しました。彼が幼稚園の先生になったのは「たまたま」です。
しかし、彼は自分を満たす感情を知っていました。そうでなければ、その「たまたまのチャンス」に気づくことも、つかむことも、できなかったことでしょう。
社会で成功するのも、幸せな生活を送ることができるのも、能力が高いからではありません。
自分の才能・特性・価値観をよく理解している。
こうした人が、自分の軸を見つけ、「やりたいこと」を通じて、成功や幸せをつかんでいくのです。