「ブランド認知を高める」店頭プロモーション

商品プロモーションで「ファンの増加」を図る一方、「ブランド認知拡大」には店頭プロモーションを活用している。

野村社長はプロモーションについてメディアから取材を受けることが多い。そこでは、「広告予算が限られている」「潤沢な原資がない」といった言葉が頻出する。カネがないから、アタマを使う。

その好例が、19年1月のバーガーキング下北沢店の開店告知だ。使ったのは「紙」だけ。X(旧ツイッター)で寄せられたファンの出店要望と自社の返信を、巨大な紙に印刷し、開店工事中の店舗の窓一面に貼りつけたのだ。

「バーガーキング下北沢店作ってくれや」
「作ってんで! オープン初日にお待ちしています」

これを工事中の店舗に貼ることで、ファンの要望に即座に応え、「いま作っている」という臨場感を演出した。店舗周辺の人通りが多い時刻を調べ、貼り付け作業終了とリツイート時刻を、それに合わせた。この告知に関するX(旧ツイッター)の投稿は、3時間で10万を超えたという。

写真=iStock.com/alexsl
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1人のファンの投稿からはじまったこのプロモーションは、自社から発信するのではなく、SNS投稿やメディア掲載を誘発させたものだ。古くからある口コミの基本である。この基本を徹底し、独特の工夫を凝らすところにこそ、バーガーキングの強みがある。

このプロモーションは、ADFEST2021(アジア太平洋広告祭)において「アウトドアロータス部門 シルバー賞」を受賞している。

「賛否両論」の縦読み広告

同広告祭で、バーガーキングが受賞したプロモーションが、もうひとつある。21年1月、閉店する近隣のマクドナルド店に向けて発した、垂れ幕メッセージだ。

私たちの2軒隣のマクドナルドさんが今日で最終日を迎えます。

たがいに良きライバルとして、アキバを愛する仲間として

ちかくにいたからこそ、私たちも頑張ることができました。マクドナルドさん

のいないこれからを思うと寂しさでいっぱいです。どうかみなさん、

勝手なお願いですが、今日は彼のところに行ってください。ずっと背中を追い続けた

チャレンジャーの私たちから、スマイルを込めて。お疲れさまでした。

このメッセージは、横に読むと「ねぎらいと感謝」の文章だが、左の1文字ずつを縦に読むと「私たちの勝チ」となるように作られていた。

閉店するマクドナルドを揶揄している。そう受け取られかねないプロモーションには、賛否両論あった。その「賛否」こそ、野村社長の狙いだった。「賛」と「否」、両方の層で話題となれば、「バーガーキング」を知る人が倍ふえる。知名度が低く資金もない。なりふり構っていられない。そんな切迫感がバーガーキングにはある。

このプロモーションも、ADFEST2021(アジア太平洋広告祭)において「PR ロータス部門 ブロンズ賞」「アウトドアロータス部門 ブロンズ賞」の2つを受賞するなど、高い評価を得ている。

「ファンを増やす」「店舗への来店を喚起する」「ブランド認知を拡大する」。そのためにはまず「話題になること」だ。プロモーションを、その目的に特化したことが、バーガーキング急成長の要因のひとつである。