成長期は上り調子だが、自転車操業状態に転落
前受金ビジネスモデルとはこのようなものです。一般に会社は銀行からの借り入れで店舗の開業資金などを賄います。しかし銀座カラーの場合、歴史があることと会員数が多いことから、前受金だけで数十億円の資金が調達できていました。
これは実質的に銀行よりも有利な条件で資金を調達できていることになります。実際、2022年4月末の信用情報では銀座カラーは銀行からの借り入れはゼロだったといいます。その資金を使って多店舗展開を図ったというのが銀座カラーのビジネスモデルでした。
これは店舗数を増やし、会員数を増やすことができる成長期には有効なビジネスモデルですが、需要が急激に減ると自転車操業状態になるというリスクがあります。銀座カラーではコロナ禍がそのターニングポイントになりました。前払いで資金を受けているので現場が働いても働いてもキャッシュは不足します。そのため新規資金調達の目的でまた会員に長期の前払いを要求するようになるのです。
銀座カラーの場合、前述した女性のケースのように大幅な割引とセットで前受金で契約を推奨する傾向が強まります。新規でカウンセリングを受けた人の場合、はじめて割が2万円引、友達紹介キャンペーンで1万5000円引(友人も同じ特典)がつき、さらに当日に契約すれば当日契約割6万円引が適用されます。
新宿→北千住まで行かないと空きがない
銀座カラーは格安で脱毛ができることがウリだったのですが、他社と比べて格安になるためにはこの当日契約割6万円引が大きいため、多くの被害者はカウンセリングを受けた当日に契約をしてしまい、後から実態に気づくことになったと思われます。
先ほどの女性から話を伺うと、「銀座カラーが倒産するのではないか」という予感は1年ほど前からあったといいます。
どういうことか尋ねると、彼女が2022年1月に契約したときは表参道店で施術を受けられていましたが、直近1年以内に複数店舗の統廃合がどんどん進み、表参道店も閉店。やむなく近隣の新宿店、渋谷店、銀座本店で予約を試みるものの、平日ですらオープン~夜の閉店時間までびっしり予約が埋まっており、ここ半年間は仕事の都合をつけて、自宅のある新宿区から足立区の北千住店まで施術に通う状況が続いていたそうです。
脱毛は基本的に月1回ペースで施術していき、回数を重ねるごとに2カ月に1回、3カ月に1回と施術を空ける期間が長くなっていきます。この女性は10回前後で「次の予約は3カ月空けてください」と施術スタッフに言われたそうですが、上記の通り都市部店舗の土日は3カ月後であっても終日予約でいっぱいだし、平日夜に何とか予約を入れられたとしても、急な用事で施術を延期するとさらに2カ月先まで待たされるような状態だったといいます。