「公明党はガン」という発言もあったが…
ただ、創価学会はいまなお公明党を自民党と連立させて国家権力に食い込んでいる存在で、衰えたといえどもまだ国政選挙で600万規模の票は動かせる。
今年、政界には「公明党の力に見切りをつけ始めた自民党が、国民民主党を連立に参画させようとしている」といった怪情報が流れ、また麻生太郎副総理が露骨に「公明党はガン」と発言するなど、自公間にはすきま風が吹きつつある。しかし、現実的にまだ公明党の持つ600万という数字を代替できるほかの宗教団体や業界団体などは存在せず、自民党は公明党切りを最終的なところで決断できるには至っていない。
そういう意味では、創価学会とはこの宗教衰退時代のなかで、カリスマ・池田大作氏を実質的に欠きながらも、ほかの宗教団体などと比べれば割とうまく組織を回してきたとも言える。その立役者は何といっても、現会長の原田稔氏であろう。
原田氏は池田氏のような宗教的カリスマ性は持たないが、東京大学卒の優秀な事務官僚的存在として、会の内外からその手腕が高く評価されてきた。例えば原田氏が会長に就任して以降、創価学会は会則(教義)の変更(2014年)や、勤行要典(創価学会員が日々読むお経の内容)の改訂(16年)、また会憲の制定(17年)など、宗教団体としてかなり大きな改革を、多々行ってきた事実がある。
重要なのは「ポスト池田」ではない
池田氏が公の場から姿を消して以降も、『聖教新聞』などの学会機関紙類にはしばしば、「池田先生のメッセージ」なるものが掲載されてきた。本当にそれを本人が書いていたものなのかどうか、創価学会員ですら疑う向きはあったが、しかしそれでもそういうメッセージが出ることで、その時々の創価学会全体の方向性を示し、会内に納得感を生みながら、原田体制は前述したような改革を実行してきた。まさに「優秀な事務官僚」の面目躍如たるものがある。
しかし、今後はそういう「池田先生のメッセージ」は発せられない。もちろん当面は、「あのとき池田先生はこうおっしゃった」というような語録などを示しながら、これまでと同じような組織運営を続けていくのだろうとは思う。しかし、そういうアクロバティックなことを見事にやり続けてきた原田氏が、もう82歳という年齢なのである。
そして、今の創価学会の幹部たちというのは、原田氏のように池田氏に寄り添って組織拡大に汗をかいてきた人々というより、創価大学その他のエリート養成コースを通って純粋培養された、“小粒なお坊ちゃん”ばかりになってきているというのが、もっぱらの評判だ(それは公明党の国会議員にも当てはまる)。
すでに述べてきたように、実は創価学会の「ポスト池田体制」はすでに完成している。今回の池田氏の訃報も、悲しみのなかで冷静に受け止めている会員が多く、これによって組織が根本的に揺らぐ前兆のようなものも確認できない。しかし、筆者は追悼ムードの創価学会周辺で、現会員から「本当に心配なのはポスト池田ではなく、ポスト原田だ」という複数の証言を得ている。それは実際に、そうなのだろう。