ベトナムの送り出し業者から届いたメール
実習生の過半数、失踪した実習生に至っては実に3人に2人がベトナム人だ。実習制度をめぐる問題、とりわけ失踪は「ベトナム問題」だといえる。
そのベトナム実習生を仲介している関西の監理団体に10月末、1通のメールが届いた。〈お客様 各位〉で始まる一斉送信されたメールで、送り主はベトナムの送り出し業者「A社」である。
タイトルが〈高度人材・技人国・特定技能ならA送り出し機関〉となっていることからもわかるように、労働者の売り込みメールだ。
「技人国」とは、ホワイトカラーの専門職向けの在留資格「技術・人文知識・国際業務」の略称である。「特定技能」は2019年に始まった制度で、日本での長期就労を希望する実習生が利用するケースが多い。
生々しい「紹介料」の実態
メールには、1人当たりの紹介料も記されている。技人国の場合、日本語能力試験で上から3番目の〈N3レベルは10万円〉、1つ上の〈N2レベルは15万円〉、特定技能外国人は10万円とある。
そして肝心の実習生については、メールの最後にこう書いてある。
〈受入企業を紹介してもらう場合に紹介者に20万円/名を支払います。〉※原文ママ
つまり、実習生以外の斡旋ではA社への紹介料が発生するが、実習生に限っては逆にA社から監理団体に紹介料が支払われる。しかも1人につき20万円という高額だ。
帳簿に載らない「賄賂」
メールを受け取った監理団体は、過去にA社から実習生を受け入れていた。団体の関係者が言う。
「高度人材などのことも書かれていますが、A社の主なビジネスは実習生の送り出し。1人につき20万円のキックバックを我々に払っても、多くの実習生を日本へ送りたいんです」
関係者はさらにこう続ける。
「キックバックや接待はベトナムの業者の多くがやっていて、業界関係者なら誰でも知っていること。ただし、キックバックは帳簿には載らない賄賂です。金額は口頭でやりとりするもので、堂々とメールに書いてあることは珍しい」