子どもの教育に自信をもてなくなった理由

今申し上げていたことでおわかりだと思いますが、少なくとも私どもの世代は、自分が育った育ち方をよしとしない。はっきり言えば、カボチャとサツマイモと、半ズボンと、あれはまずかった。だから子どもには冷蔵庫を開ければいつでも食べ物が出てくるようにしてと、こういうふうにやっている。

養老孟司『こう考えると、うまくいく。~脳化社会の歩き方~』(扶桑社)

そうすると、つまり自分の過去を否定してしまった人というのは、他人にどうしろと言えなくなるということに気がつきます。それが今申し上げた歴史観の問題ですね。

ですから、それを大げさにしていきますと、日本という国がどういうふうに動いてきたかということを、どういうふうに把握するかということが言えなくなるんです。

違うやり方もいいでしょうと。やってみて、違う育ちかたをした今の子どもが大きくなってみますと、これはちょっとおかしいんじゃないかと、今度は言い出す。これも変な話であって、自分自身の育ちを肯定するのかしないのか、まずそれがあるわけで、それをうっかりといいますか、ある意味で全否定してきたのが現代ですから。そうしますとわけがわからなくなって当然だなと私は思うようになりました。

関連記事
【第1回】人間の死体はいつヒトからモノに変わるのか…解剖学者・養老孟司が「人間の死体には3種類ある」という理由
中2で「初めてのセックスはどんな状況か」を考えさせる…日本と全然違うカナダの性教育
「失敗してもいいからやってごらん」と言ってはいけない…わが子をUCLA特待生に育てた高卒母のモットー
なぜ子供は「親の財布からお金を盗む」のか…なんでもウソでごまかす子供を一変させる"最高の一言"
小5娘→小3娘が入れ替わりで突然キレだした…「思春期だから」で放置してはいけない医学的理由