隣国の「反日勢力」が増大していくカラクリ

例えば、日本国内の一部に特定の隣国を敵視する集団がいて、その相手国の一部にも日本を敵視する「反日勢力」が存在する場合、罵倒や誹謗ひぼうの応酬でそれらの「b集団」同士の対立が深まれば深まるほど、互いに敵視しているはずの両者が、二国間関係の悪化という状況に「共通の利益」を見出すようになる。

相手国の少数派にすぎない「b集団」が、日本に対する敵意を露わにした攻撃的な言動を見せた時、日本の「b集団」は、そうした攻撃的言辞が「相手国の国民全体の総意」であるかのように話を膨らませ、多くの日本人に不快感と被害者意識を抱かせ、相手国に対する敵意の炎を燃やして、自分と一緒に相手国を憎む「仲間」を増やそうとする。

これによって何が生まれるかといえば、日本と相手国の対立関係の常態化・恒久化であり、非宥和的で好戦的な主張を叫ぶ政治家や政治集団の発言力の増大である。

誰が煽っているのを見抜かなければいけない

そして、相手国との「和解と友好」を提唱する双方の「a集団」の発言力は、相対的に低下する。「敵との和解や友好を口にするお前は、わが国民の結束を内部から乱すことで敵側を利する、敵の手先だ」との論理で、激しく糾弾される。

山崎雅弘『新版 中東戦争前史』(朝日文庫)

二つの国の国民が、互いに「相手国民は自国を嫌っている・憎んでいる」と思い込み、不安や猜疑心、被害者意識をかき立てられて、攻撃的言辞の応酬に加わるようになれば、やがて両国の関係は戦争や紛争の前段階へと移行する。憎悪や敵意によって始まる戦争や紛争は、勃発が秒読み段階に入ってからでは誰にも止めることができない。

誰がそのような行動を誘発しているのか。相手国との関係悪化で政治的利益を得るのは誰なのか。平和を望むなら、見かけ上の「A国対B国」という単純な対立の図式に隠された、本当の「戦争や紛争を創り出す図式」を見抜き、それを無効化しなくてはならない。

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