高級住宅地の戸建てと比べると「出口戦略」が不透明

購入したタワマンの資産価格が上昇したところを見計らって売却し、キャピタルゲインを得るという明確な「出口戦略」を持って投資する場合は別として、タワマンは、高級住宅地の土地付き戸建てを代々受け継ぎ暮らすというのとは違い、最終的な「出口戦略」が不透明だという根本的な問題もある。

タワマンだけでなく、我が国のマンション全体にいえることであるが、これから何十年後かに経年劣化が進んだ際に、最終的に建替えるのか、取り壊すのかの選択を迫られることになる。

いずれの場合も現行制度上では区分所有者の5分の4の賛成が必要となり、かつ多額の所有者負担金が追加で求められることになる。

タワマンのような大規模マンションになればなるほど、区分所有者の80%もの賛同を得ることは、事実上不可能だ。築年数が経過すればするほど、大規模な修繕なども頻繁に必要となり、かつ、所有者も代替わりしたり、所有者不明や音信不通、これからは海外所有者も増えることにもなろう。

こうした所有者全員と連絡をとりながら、建替えプランや費用負担などを決めていくという気の遠くなるような作業が必要となるのだ。

神戸市では、2020年7月から、三宮駅周辺でのタワマン新築を禁止するなどタワマン規制を導入している。久元喜造神戸市長の「高層タワーマンションは正直持続可能ではないというふうに思います。数十年するとこれは廃墟化する可能性があって、我が国の大都市においては極めて深刻な問題が生じます」(定例会見2023年10月12日)との発言も、タワマンの「出口戦略」の難しさを踏まえたものといえよう。

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富裕層の特徴とタワマンは相容れない

筆者は、国内外の富裕層向け資産運用アドバイザーや金融コンサルタントの立場で、数多くの富裕層と直接接してきた。こうした経験則からいえる富裕層の特徴として、①煩わしいのは嫌、②わざわざリスクを取らない、③時間泥棒が大嫌い、といった点が挙げられる。

圧倒的な眺望や駅から近い利便性に豪華な共用部がある一方、自分の部屋から外に出るまで時間がかかり、騒音や人付き合いの煩わしさ、地震や台風などで電力供給が止まった時のリスク、そして何より「出口戦略」がない、という側面もあるタワマン。煩わしさが嫌で、リスクに敏感で、時間を大切にするという特徴を一般の人々以上に強く持つ富裕層とタワマンの相性はあまり良くない。これらが多くの富裕層がタワマンに興味を示さない理由であったりする。

中短期的なキャピタルゲイン狙いの投資対象や、相続節税対策、どんなものかという好奇心と話題作りと経験のため、セカンドハウスや期間限定での居住といった目的ではなく、土地付きの戸建てを中心にあまたある選択肢のなかから、多くの富裕層が終の棲家としてタワマンをわざわざ選ぶことは、この先もなかなかないのかもしれない。

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