既婚者向けの非配偶者間生殖補助医療は、最後の手段

一方、婚姻関係にある夫婦で子どもに恵まれない場合は、条件を満たしていれば現状でも最終手段として、特定の医療機関で卵子提供・精子提供を受ける選択肢があります。現状の日本で選べないものとしては、代理母(代理出産、ホストマザー)が挙げられるでしょう。

※編集部註:初出時、「卵子提供・精子提供は認められており、助成もされます」と書きましたが、誤りがありましたので訂正します(2023年10月24日18時30分追記)

これは、日本の民法(民法779条)に「分娩ぶんべんの事実により母子関係は発生する」という規定があり、認可には法改正が必要になりそうです。

加えて、非配偶者間生殖補助医療には、慎重にならざるを得ない下記のような問題があります。

・重篤な遺伝疾患(卵子・精子提供)
・近親婚問題(卵子・精子提供。成人後の恋愛時)
・妊娠時の母体ケア不足による障害(代理出産。栄養不良や飲酒、喫煙、素行不良など)
・早産による障害(代理出産)
・母体の商品化(代理出産。貧困による母体の切り売り。高所得者の安易な利用)
・母体の損傷(代理出産。自己の出産可能性が減る)

当然、法改正も交えて議論が必要となるでしょう。

ただ言えるのは、男性も女性も不妊治療法が次々に確立され、先端医療認定も受けられる流れにあるため、今後、治療成績の上昇が相当見込まれます。なので、非配偶者間生殖補助医療については、色々試したあとの最後の手段とする位置づけに留まるでしょう。

未婚者やLGBTカップルが子どもをもつために

さて、未婚者についてはどうしたらよいでしょうか。

先ほど書いた通り、私は「少子化対策として」婚外子を公的支援することに、疑問を持つ立場です。ただ、個人が自由に生きる選択肢を増やすという意味では、一定の制約を設け、精子提供・卵子提供・人工授精を公的支援していくのもありではないかと考えています。

現在、非配偶者間生殖補助医療(卵子提供・精子提供)は、JISART(日本生殖補助医療標準化機関)のガイドラインで、婚姻関係にある人しか認められていません。

新たに対象として検討すべきは、

・年齢(35歳など)的に閉経までの残余期間が短くなってきた未婚女性
・性的マイノリティ(LGBTQ)で、自然妊娠ができないカップル

とりわけ、ゲイカップルには、代理母まで検討が必要となるでしょう。

上記の対象者でなおかつ

・出産後の育児可能性(本人意思、周囲の支援)が高いかどうか

を倫理委員会が審査・判定する形で、許可を与えるなどが良いのではないでしょうか。

自身の主義信条にしたがってライフコースを自己決定する権利として、これらの公的支援をすべきと考えます。繰り返しとなりますが、少子化対策としては、それほどの効果はないでしょう。

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