高級老人ホーム化する豪華客船
船内のツアーデスクでも「何クルーズも乗り継いでいるシニアは多い」と聞いた。何でも、下船するのは孫のバースデーくらいであとは船で過ごしていた方が、老人ホームに入るより、優雅に楽しく余生を過ごせる、と。
確かに、バリアフリーの部屋もあるし、車椅子で乗り込んでも大丈夫、何かあれば客船スタッフは素早く飛んできてにこやかに対応してくれる。都会の喧騒から離れ、大海原で朝日と夕陽と星空も見ることができて、寄港した場所では気が向いたら降りればいい。3食ついて、長く乗っていればクリーニングなどのさまざまな特典があり、同じ階級の友達もできる。さまざまなアクティビティがあるから、リクリエーションにも事欠かない。遊びは用意されている。
カジノでも、一人で賭けにくるシニア女子を見かけた。この70代女性とはルーレットで仲良くなった。「ダイヤモンドはもう飽きてきたから、次は飛鳥に乗るのよ。おひとり様プランっていうのがあってね、そんなに高くないのよ。120くらいかな」。
ブラックジャックのテーブルで同席した80歳近いシニア女子は、“21”なんて数えられないけれど、周りのサポート付きで連日通っていた。これは頭の体操にもいいかもしれない。21を数えて賭けていれば、100から7を引いていく認知症のテストも楽々クリアできそうだ。
医療もついて、住まいもついて、お風呂(有料)もあって、周りの目もあって、静寂と賑やかさも求めればあって、仲間もいて、どこかのホームに入るよりずっとリーズナブルで楽しいかもしれないと、私もこの先の余生について思いを馳せた。
乗った人は、「また乗りたい」と声をそろえる。乗ってしまえば移動もなく、3食ついて、豪華エンターテインメント付きのクルーズは、老いも若きもこれから、日本で大流行しそうな予感だ。