社員を疲弊させると業績が落ち本末転倒に

それなら早く帰らせて、明日の仕事のための英気を養ってくれた方が、よほどお店の業績に寄与するのではないでしょうか?

疲れ切った姿で接客するよりも、元気な姿を見せた方が、お客様は喜んでくれるはずです。

店長からすれば、慣例として、終礼後のミーティングをやっているのかもしれませんが、そんなに遅い時間まで話し合わなければならないことは、そもそもないはずです。

「ゴメン。今から30分だけでいいから、ズームで話ができる? 残業代は別途で支払うから」

仮に重要な議題であっても、こうした形で十分ではないでしょうか?

繰り返しますが、ミーティングは本来、お店の業績を伸ばすためのものであるはずです。

にもかかわらず、ミーティングを繰り返すことで社員が疲弊して、結果的に離職してしまうようだと、かえってお店の業績が落ちてしまい、本末転倒になりかねません。

そうした観点から、ディアーズでは現場のミーティングは一切行いませんが、会社の業績は右肩上がりです。

ミーティングをしなくても、お店の業績は伸ばせる。

これが僕の結論です。

写真=iStock.com/nicoletaionescu
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人を育てる極意「鉄は熱い時に叩け」

さて、こうした形で僕は従業員の管理を行っていますが、本稿の最後に「人を育てる」という点について、僕の持論を述べておきたいと思います。

従業員時代、僕は店長として、必死に部下を育てようとしました。

厳しくすると辞めてしまうので、おだてながら育てようと試みましたが、それだと逆に育たないというジレンマを抱えることになりました。

そうして1周回って気づいたのは、結局のところ、人を育てることはできないということです。根底として、人は変わらない生き物だし、価値観だって、そうそう変わるものではありません。

人が育つのは、その人が勝手に育つのであって、僕らにできることがあるとすれば、成長を後押ししてあげることだけです。

成長を望んでいない人に対して、成長することを押し付けても、それはストレスにしかなりません。

あまりに度が過ぎると、今の時代は「パワーハラスメント」として訴えられかねません。

昔から「鉄は熱いうちに打て」という諺がありますが、僕は「鉄は熱い時に叩け」が正しいと思っています。

「『熱いうちに』と『熱い時に』で、どこがどう違うの?」

そのように思われるかもしれませんが、「熱いうちに」という言葉には、「鉄は熱くなることが前提である」という意味合いが含まれているように感じます。