将軍が手をつけて良い女性は8人程度

大奥は将軍の妻子が住む空間であるが、同時に徳川家の血筋を残す役割が期待された。ただ、将軍が大奥の女中すべてと性愛関係を持てるわけではない。奥女中は、将軍付、御台所付、世嗣付など仕える主人が決まっていた。一番格が高いのは将軍付で、給与もよかったし数も多かった。

将軍が手をつけて良い者は、将軍付の奥女中のうち中﨟の職にある者たちだった。旗本の娘が多く、人数は8人程度である。意外に思う読者も多いだろう。もちろん、どうしても気に入った奥女中がいれば、将軍ゆえ例外もあったが……。

将軍のお手が付いた女性がすぐに側室として遇されるわけではない。子供を産むとか、将軍にとくに気に入られてたびたび同衾どうきんを求められると、別室を与えられて御部屋様と呼ばれ、側室に昇格した。

政治力を抑制するため、寝室に監視がついた

河合敦『日本三大幕府を解剖する 鎌倉・室町・江戸幕府の特色と内幕』(朝日新書)

大奥は強い政治力を持っており、桂昌院けいしょういん(綱吉の生母)に取り入った柳沢吉保、月光院げっこういん(家継の生母)に信頼された間部詮房などは、幕府で権力を握っている。また田沼意次が栄達した一因は、大奥を巧みに懐柔し、思うがままに動かせたからだとわかっている。

ただ、将軍綱吉の頃から将軍と同衾した奥女中が政治的な願い事をしないよう、不思議な制度が成立する。床入りのさい、まったく関係ない女中などが寝室におり、一晩中寝ないで睦言むつごとに聞き耳を立て、翌朝、どんなことを話したかを報告するのだ。

ただ、それでも政治力は衰えず、将軍家斉に寵愛された側室・お美代みよの方の親族は、仏教界で大きな力を有している。

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