就活でも企業に健康診断書を提出するよう求められ…

友達にも不安を聞いてもらいたくて「実はがんだったんだ」と軽い調子で打ち明けると、「がん=死ぬ」という認識で相手が動揺し、精神的な悩みを相談できるところまではいかなかった。

「相談できる人がいなかったのは辛かったですね。さらに就職活動になって、大学の健康診断書を提出するように求める企業もありました。私は広告系やテレビ局を志望していましたが、診断書で体力をみるのかなと不安でした。体力は戻っているものの、がんにかかったことがマイナスに響かないか。最終面接くらいまで進み、手ごたえもあった企業ですが、診断書で落ちるかもしれないな、という思いがあり、勝手に落ち込んでいました」

結果、診断書を提出せずに済んだ企業に就職。しかしあまりにハードな勤務態勢だったせいか、就職後、一度倒れたときがあった。そのときに初めて上司にがんにかかっていたことを伝えた。

すると「本当? そうだったの?」「無理しないように」という反応で、少しほっとした。信頼できる同僚にも事情を伝えると好意的だった。

がん患者にとっても地方と都会には情報格差がある

情報格差のある地方とは違って、勤務地の大阪や東京は、患者会などの情報にも接しやすかった。最近は富山県や長野県で新たにAYA世代のがん患者が発信しようとする動きも出てきて、情報格差も縮まるのではないかと思っている。

筆者撮影
AYA研で発行している冊子の数々

「情報がないと孤独ですよね。私もそうだったので、よくわかります。活動を後押しできるようなサポートをAYA研でできると良いと思います」

現在は半年に1回、検診のため通院している。毎日、チラージンという甲状腺ホルモンを補う薬を飲んでいる。

「この薬は死ぬまで飲まなければいけないそうです。辛かったのは、2年前くらいですか。血液検査や超音波検査をしたら、何か腫瘍のようなものがあるかもしれないと言われ、ドキッとしました。再発かと不安でしたが、結果、経過観察になりました。むしろ小さくなりつつあって、ほっとしています」

タバコ吸って酒を飲んで体に悪いことたくさんしているのに、がんにかからない人。きちんと体を気遣っているのに、がんにかかってしまう人。何が原因でがんにかかるのかはわからない。三島さんも「なぜ私だったの?」とときどき思い悩んでいる。