日本人は「生きる屍」になっている

【白井】日本人は日本の政治家にそもそも期待していない。それと同時に自分自身にも期待していないのではないですか。まさに日本人は生きる屍化している。これだけの安全保障戦略の大転換に対してほとんど反応しないのですから。

内田樹、白井聡『新しい戦前 この国の“いま”を読み解く』(朝日新書)

つまり、もう来るべきものがきたのです。拙著『国体論―菊と星条旗』(集英社新書、2018年)に書いたように、戦後日本はアメリカを天皇のごとくいただいて、アメリカに愛されているんだとやってきました。戦前の大日本帝国では、天皇陛下が愛してくださるという恩に対して、「陛下の赤子」たる日本国民は、一朝事あらば命で恩返しする、天皇陛下のために死ぬという義務がありました。

戦後の日本人はどうするのか。ありがたいアメリカの恩をいつ、どうやって返すのか。アメリカがピンチの時にアメリカのために死ねるのか。そうした問いに対しては「憲法9条というものがありまして……」などと言ってずっと逃れてきたわけです。ずいぶん都合のいい話ですが、いよいよそのご都合主義がもたなくなってきた。今まさに「アメリカの覇権を無限延長するために喜んで死ねるよな?」と、いわば究極の問いが突きつけられています。

しかし、戦後の日本にとってのアメリカも、大日本帝国の天皇と同じように本当は空虚な「国体」です。その空虚さに日本人はもう耐えられなくなっている。だから物事を考えるのも嫌だし、何が起きているのかを認識するのも嫌だという、ひどい精神状態になっているのでしょう。

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