藤島社長は幼少期から合宿所のタレントと接してきたか
性加害の告発という本筋からは少し逸れるが、『光GENJIへ』にはこの問題を考える上で注目すべき記述が他にもいくつかある。
まず現社長であり、ジャニー喜多川の性加害について「知らなかったでは決してすまされない話だと思っておりますが、知りませんでした」とコメントした藤島ジュリー景子が出てくる場面。北が事務所にいた1970年代、ジュリーは就学前か小学生だったと思われるが、母親のメリーと共に合宿所に出入りしていた。北がその一室で発作的にガス自殺を図った時は、マネージャーが部屋の外からドアをこじあけようとし、大人の手ではドアの隙間に手を入れられないのでジュリーが手を入れたという。
幼い頃から合宿所に入り浸り、アイドルのそんな裏の姿も見てきた彼女が、叔父の性的指向や性行為の強要を知らなかったとは考えにくい。『クローズアップ現代』の調査によれば、元所属タレント13人中6人、つまり半数が性被害に遭ったと回答している。岡本カウアンの推測によれば被害者は計100人以上。社会人になり、フジテレビを経てジャニーズ事務所に入ったジュリーは、TOKIOや嵐などをブレイクさせたが、たくさんのタレントと接する間、彼らから性被害について相談されたことはなかったのだろうか。
ジャニー喜多川イズムが詰まった舞台『少年たち』
また、フォーリーブスと言えば、ジャニーズのファンにはおなじみのミュージカル『少年たち』の初演(1965年)を成功させたグループである。この物語は、日米の二重国籍をもちアメリカのエンターテインメントを日本に輸入してきたジャニー喜多川が『ウエスト・サイド・ストーリー』などにインスパイアされ、少年刑務所に入っている少年たちのハングリーな生きざまを描いたもの。
企画・構成・総合演出を手掛け、ジャニー喜多川イズムが詰まったこの舞台は、フォーリーブス時代に公演100回を超え「エネルギッシュな踊りと歌に酔いしれた少女たちは、夜通し合宿所を取り囲んで……」と北は振り返っている。それから50年間引き継がれ上演されてきた『少年たち』。映画版はSixTONESやSnow Manのメンバーを中心に撮影され、2019年、ジャニー喜多川が死去する直前にその“偉業”を称えるような形で公開された。