金融緩和の目標は「消費者物価上昇率2%」
現金がふんだんにある状態を国外から見ると、ドルの量は変わっていないのに、日本円が世の中にふんだんに出回ることになり、円の価値が下がります。つまり円安になります。円安になると輸出産業が活発になります。
黒田総裁は「消費者物価上昇率が2%になるまで続ける」と宣言し、金融緩和を「黒田バズーカ」と呼ぶほど、市場の期待を上回る規模で行ないました。これによって「当分の間、金融緩和は続く」とみた外国人投資家がまず日本株を買い始め、その後、日本人投資家が追随することで、株価がみるみる上昇し始めました。アベノミクスはバブルとも言えるほどの株高を生み出したのです。
第二の矢である「機動的な財政政策」は、いわゆるバラマキです。民主党政権時代、「コンクリートから人へ」というキャッチフレーズのもとで公共事業は抑えられていました。これを復活させて地方経済を活性化し、デフレ脱却を狙いました。
中長期的な成長戦略はまだ描けていない
第三の矢「民間の投資を引き出す成長戦略」は展望が見えません。第一の矢、第二の矢は日本経済を目覚めさせるためのショック療法と言えます。
これによって浮上した景気を、中長期的な成長につなげていくのが成長戦略です。成長戦略が描けないのは安倍政権以前からの日本の課題です。アメリカのGAFAMのような革新的な産業が日本から生まれる気配がありません。
アベノミクスによって世の中に供給されたお金は、株や土地への投資へと向かい、株価や土地の価格の上昇をもたらしました。株価が上がり、お金持ちがお金を使うようになると社会全体が活気づきます。公共事業によって地方の経済も活性化されました。コロナ禍前までは多くの雇用も生み出したのは事実です。第一の矢、第二の矢はひとまず成果を上げたと言えそうです。しかし、アベノミクスの副作用も明らかになっています。
公共事業を増やしたことで国の借金が増えています。つまり、国債の発行が増えているのです。