台湾有事が日本有事となる可能性は高い
④アメリカは「曖昧戦略」を止めるのか
アメリカは1972年以来、台湾の現状維持のためのメカニズムを維持してきました。それは、①アメリカは台湾独立を支持しないが、②台湾は中国の一部という中国の主張は承認せず、③国内法である台湾関係法で台湾を支援し、④中国に台湾問題の平和的解決を求める、というものでした。
ところが、近年の人民解放軍の能力向上により、こうした政策だけでは中国の台湾侵攻を抑止できず、アメリカは従来の「曖昧戦略」を一部見直し始めます。当然、中国側はアメリカの動きに強く反発しています。
⑤台湾有事は日本有事となるのか
日本有事を外国による対日武力行使と定義するなら、台湾有事が日本有事となる可能性は高いでしょう。日本の与那国島は台湾から僅か107kmしか離れていません。中国が本気で台湾を制圧したければ、台湾包囲作戦が必要ですが、そうなれば与那国島の領海・領空は戦域となります。
更に、米軍の介入を不可避と考えれば、中国は在日米軍基地を攻撃するでしょうが、そうした武力行使は日本の領土に対する攻撃ですから、その時点で中国の攻撃は日本有事となります。問題はもはや集団的自衛権ではなく、日本の個別的自衛権を発動するか否かの問題となるのです。
宮家の採点(○は肯定、△は肯定でも否定でもない、×は否定の意)
悪魔のささやき
①△ 習近平は慎重であり、台湾制圧に失敗する可能性を恐れているはず
②× 人民解放軍は過去40年近く本格的な戦争を経験していない
③△ アメリカの台湾支援が軍事的にどの程度かは状況によって異なる
④× 台湾有事の際、日米が何らかの軍事的対応をとることは不可避
天使のさえずり
①△ 習近平が党内情勢や国内民族主義の高揚で判断ミスをする恐れはある
②○ 中国軍が大規模な海上侵攻や上陸作戦を行った経験はない
③○ アメリカは台湾関係法に基づき軍事的に関与する
④○ 在日米軍基地は最初かつ最大の攻撃対象となる可能性がある