敏腕マネージャーが独立する韓国、大物芸能人が独立する日本

本節では、エンターテインメント業界の動向のメカニズムを探っていく。その過程で「背景を考える、とはこういうことなのか」と気づいてもらいたい。

日本では、ここ10年、大物アーティストや芸能人の独立が多数起きている。

引退した安室奈美恵や、元SMAPの新しい地図、俳優の米倉涼子など、大物の独立が相次いでいる。

しかし、韓国の芸能界で、独立する芸能人は少ないが有能なマネージャーは次々に独立している。

なぜ韓国では敏腕マネージャーが独立し、日本は大物アーティストや芸能人が独立するのか。

ここにも背景があり、メカニズムが隠されている。

今では誰もが知っているBTSを輩出したHYBE(設立時の社名はビッグ・ヒット・エンターテインメント)は、韓国のJYPエンターテインメントという大手事務所にプロデューサーとして所属していたパン・シヒョク氏が独立して作った会社である。

写真=iStock.com/tickcharoen04
※写真はイメージです

背景にあるのはマーケットの成長速度の違い

HYBEができるまで、韓国で大手芸能事務所といえば、少女時代や東方神起を輩出したSMエンターテインメント、NiziUやTWICEを輩出したJYPエンターテインメント、BIGBANG、BLACK PINKなどを輩出したYGエンターテインメントの3社であった。

他にもSMエンターテインメントのマネージャーが独立したCre.Kerエンターテインメント(現ISTエンターテインメント)やビッグ・ヒット・エンターテインメントから独立したスターシップ・エンターテインメントなど、韓国では大手事務所から優秀なマネージャーやプロデューサーが独立し、新たなアーティストを輩出している。

一方、日本はマネージャーが独立するというより、アーティストが事務所から独立することのほうが多い。

この背景を考えてみると、K-POPは市場が世界に急拡大しているうえ、ファンもグローバルだ。K-POPアーティストのYouTubeのコメント欄は、ハングルだけでなく英語、スペイン語、ポルトガル語など、さまざまな言語で書き込みがされている。

一方、日本のアーティストの海外進出は限定的であり、ファンは日本人中心である。

つまり、マーケットの成長という背景があるからこそ、韓国はマネージャーが独立するのである。

一方、日本の音楽マーケットは急成長しているわけではない。市場が成長しないと、パイの奪い合いが始まるため、アーティストが独立するのではないかと考えられる。

これが韓国ではマネージャーが独立し、日本ではアーティストが独立するメカニズムである。