今回は筆頭株主イオンが救世主となったが…

株主総会決議で鍵を握ったのは、ツルハ株の13%強を保有する筆頭株主のイオンが会社側に賛成票を投じたことだ。

イオンの賛成票には思惑も感じられる。イオンは傘下に業界最大手のウエルシアホールディングスを抱えており、市場では「ツルハとウエルシアが統合すれば年間売り上げ2兆円規模のドラッグストアが誕生する」(大手証券幹部)と、再編を予想する市場関係者も少なくない。イオン関係者からも今回の株主総会で会社側に与したことで「貸しをつくった」との声が聞かれる。

オアシスはツルハ株12.8%を保有する。一方、鶴羽家の持株比率は5%弱(有価証券報告書における上位10位までの大株主中)に過ぎない。オアシスの創業者兼最高投資責任者のセス・フィッシャー氏は、「ドラッグストア業界には再編が必要です。再編は顧客、従業員、債権者、株主など、すべてのステークホルダーに利益をもたらすものです」とコメントしている。

再編をめぐりアクティビストの要求は今後も強まると予想される。

100年企業の多さ=旧態依然の体質も色濃い

世界中の100年企業のうち、日本企業は約4割を占めるとされる。それだけ旧態依然の会社が多いという側面があることは事実だ。とくに2015年6月から金融庁と東証が「コーポレート・ガバナンス・コード」を制定、適用開始して以降、アクティビストによる攻勢は強まっている。

日本にアクティビストが本格的に上陸してきたのは2000年代初頭からだが、その性格は大きく変化してきている。当初は、大量に買い付けた株式を高値で買い取らせる「グリーンメーラー」として登場したアクティビストだが、現在は企業価値の最大化をうたい、経営の選択と集中や再編を求めてくるケースが増えている。

一見、長期的な視野に立った要望へと軸足を移しているようにみえるが、依然として自社株買いや増配要求などの短期的な利益追求もみてとれる。「アクティビストの裏側は強欲な投資家であり、投資の回収に期限を設けている」(市場関係者)ためだ。

写真=iStock.com/lucadp
※写真はイメージです

一方、経営者側もアクティビストの圧力を受け、予防策も高度化しつつある。

ゴールデン・パラシュート(金の落下傘)、ティン・パラシュート(ブリキの落下傘)、シャーク・リぺラント(サメ除け条項、別名:モーゼの靴底)、スタッガードボード(役員改選コントロール)、スーパーマジョリティー(絶対多数規定)、チェンジ・オブ・コントロール(資本拘束条項)などメニューは多彩だ。