日本の「2035年電動車100%」はマヤカシ

日本政府もすでに、2035年までに新車販売を100%電動車にする方針を発表している。しかし、この“電動車”には、HEV、PHEV、FCVも含まれている。しかも、宣言文である「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」は、次のように書かれている。

《遅くとも2030年代半ばまでに、乗用車新車販売で電動車100%を実現できるよう包括的な措置を講じる》

「実現する」ではなく、「実現できるよう包括的な措置を講じる」である。これでは、日本の政策はマヤカシではないかと思われても仕方あるまい。

こうした日本政府のカーボンニュートラルに対する姿勢が、トヨタをはじめとする日本メーカーに「全方位戦略」を取らせてしまったと言えるだろう。

日本の自動車産業の「EV敗戦」は確実か?

トヨタは日本を代表する世界企業であり、日本企業が軒並み輝きを失うなか、ただ1社残った大エクセレントカンパニーである。

かつて日本企業の最盛期とされた1989年、世界の時価総額ランキングで、日本企業はトップ10に7社、トップ50に32社もランクインしていた。それがいまやトップ10にはゼロ、トップ50にやっとトヨタ1社が入っているだけだ。

「フォーチュン・グローバル500」(FG500)の2022年版では、500位以内にランクインした日本企業は47社。1位の中国136社、2位のアメリカ124社の3分の1弱に過ぎなくなった。

もしトヨタまで輝きを失ったら、日本経済は本当に大きく傾いてしまう。

これまでの「失われた30年」で、「ものづくりニッポン」は、数々の敗戦を喫してきた。家電敗戦、半導体敗戦、PC敗戦、液晶敗戦、スマホ敗戦など、挙げていけばキリがない。この先、自動車産業まで敗戦を喫してしまうのだろうか?

山田順『地球温暖化敗戦 日本経済の絶望未来』(ベストブック)

こんな状況になったのは、トヨタという一企業、自動車産業という一業界の問題ではない。政治の問題である。この国を動かす政治家と官僚に、未来を見据える力がなかったうえ、判断力、決断力、実行力、行動力が欠けていたからだ。

未来を見据えた明確な制度の下で、できるかぎり早く動くほど、国際競争では有利になる。後から動くほど、大きな負担を強いられる。

パラダイムシフトが起こっているときは、それにいち早く対応していくほかない。変化しなければ生き残れない。地球温暖化は、国家、企業、個人に「変化すること」を強いている。まだ時間は残されているとは思うが、このままなにもしなければ、日本が世界に誇った自動車産業の「EV敗戦」は確実に訪れるだろう。

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