ウェットティッシュを22倍、トイレットペーパーを7倍購入

パニック購買しやすい傾向がある人たちは、強いパニック購買者と弱いパニック購買者を合わせて全体の約21.6%です。その中でも、強くパニック購買する人たちは非常に特徴的な人たちです。

この人たちは、普段あまり食品や日用品を買わない男性が多く、子供の人数が多い人たちが含まれました。年齢による違いはみられませんでした。

また、その心理的特性として、コロナに対する不安感が強いことや日頃から計画していない商品を衝動買いしやすい傾向を有していることがわかりました。

情報接触の傾向としてはスマホでニュースをよく見る人たちであり、商品の買い方はオンラインショッピングをあまり利用しない実店舗派の人たちでした。この人たちは、第1波時にウェットティッシュを日頃の約22倍、ペット用品を約12倍、トイレットペーパーや米を約7倍買うなど極端な買い溜め行動が見られました。

なお、この結果は、「男性が全て、強くパニック購買する」ということではなく、「強くパニック購買した人の中には男性が多く含まれていた」という解釈になりますので、目を引く結果の過剰な解釈には注意が必要です。

一方で、消費者の大部分は、通常よりも少し多くの備蓄を行っただけに過ぎないことも本研究からは確認されました。こうした人たちには、女性で家族人数が多く、日頃から食品・日用品の購買経験が豊富な人たちが含まれていました。つまり、この結果は、パニック購買が多くの人たちの間で生じているのではなく、一部の人たちに生じていることを示唆しています。

普段あまり買い物をしない男性がパニック購買

今回、強くパニック購買する人たちには、普段あまり食品・日用品を買わない男性が多いという結果が出ましたが、これは研究初期に想定していたものと比べると、少し意外なものでした。ニュースや報道でみる印象的には、普段主に家事を担当する女性や高齢者が多そうな想定を持っておりました。

ただ、今回の研究では、特定の商品ではなく、パニック購買機会に一時的に購入されやすい食品・日用品を全体的な視点でみたことにより、少し違った結果が得られたと推察されます。つまり、本研究の結果は、こうした機会にいろいろな商品を必要以上に買ってしまう人の特徴を特に表しているといえます。

また、強くパニック購買する人たちは実際に、全ての消費者群で最も多くの量を購入していたわけですが、それだけでなく、普段の購入量との差も大きい人たちです。普段買わずに、この機会に多く買っている人の特徴を本研究では捉えているといえます。

もちろん、個別の商品の事情を見ていくと、また違った結果が出てくることも想定されますので、その理解を深めていくことも必要でしょう。例えば、トイレットペーパーが供給上、品不足になっていて、そもそも限られたお店でしか買えないとします。そんな時に、複数のお店を周り巡ってトイレットペーパーを大量に買い占めていく、といった行動は、本研究で分析対象として扱っている消費者行動とは異なりますので、解釈する上で注意しなくてはいけません。

写真=iStock.com/Peter Carruthers
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