病院や養護施設、児童自立支援施設を転々とする
事件を起こしたのは、少年院から出院してきたばかりのK少年。小学生のころから同級生や教師に暴力を振るうなどの問題行動が見られ、小学校5年生から、病院や養護施設、児童自立支援施設を転々としました。そこでも、職員らへの暴力が続きました。
K少年は、児童自立支援施設で暴れたことで、ぐ犯として家庭裁判所に送致され、少年院に入ることになりました。
少年院では、投薬治療の影響もあり、ずっと身体のだるさがあったそうで、そのためか、暴力を振るうなどの問題行動はなく、「成績優秀」として出院することになりました。
母親が受け入れを拒絶、直後に殺人事件を引き起こす
少年院に入った当初は、地元にいる母親のもとを帰住先とする環境調整が行われていましたが、出院直前になって母親が受け入れを拒絶。そのため、K少年は急遽、更生保護施設へ入ることになりました。
ところが、更生保護施設へ入った翌日、K少年は施設を抜け出してしまいます。
そのまま、バスに乗って、市街地に向かい、目的もなくさまよい歩きました。
途中にあった店舗で包丁を盗んだK少年は、たまたま見かけた若い女性に、包丁をむけました。その女性は、K少年の行動をたしなめ、自首を促しましたが、そのことをきっかけとして、K少年は女性に切りつけ、さらに複数回刺すことで、女性を死に至らしめてしまったのでした。
少年が勾留された段階で、複数選任の国選弁護人のひとりとなり、K少年がいる警察署に面会にいきました。
ところが、K少年は、眼をそらしたまま、ボソボソと小さい声で話すうえに、急に話が飛んだりするので、なかなか会話が成立しません。
はたして、この少年を理解し、寄り添うことができるのだろうか、とちょっと不安になりました(そのような思いにかられたのは少年事件をやるようになって、初めてのことでした)。