片方の脳を熟睡させ、片方は覚醒できる状態に

アメリカのブラウン大学の研究者たちが行った、この現象に関する実験がある。見知らぬベッドで初めて睡眠をとる人の脳の活動を、MRIを用いて測定したのだ。すると、脳半球の睡眠中の活動パターンが左右非対称であることが示された。右脳が深い睡眠状態にある間、左脳の眠りは表面的で、浅い兆候が見られた。試しに物音を立ててみると、左脳のほうが通常より過敏に反応することが明らかになった。

2日目の夜には、左右の差は確認できなくなり、被験者たちの脳が物音に対して初日同様の反応を見せることもなくなった。

信じがたいことだが、私たちは片方の脳を熟睡させ、もう片方の脳では浅い眠りを保つという芸当を実際にやってのける。

だがそれには代償をともなう。いつもと同じ睡眠量を確保したとしても、朝、疲れが残っているように感じるはずだ。十分に回復を果たせず、睡眠負債を抱えた状態で目を覚ますことになる。

休暇中なら、甘んじて受けることもできるだろうが、パイロット、客室乗務員、トラック運転手など、職務上、頻繁に移動しなければいけない人は状況が異なる。

これらの職業グループでは、睡眠不足による疲労が深刻な影響をもたらす可能性があり、しかもまさにその仕事上の理由で、眠り慣れていないベッドでたびたび眠ることを余儀なくされるのだ。

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旅先のベッドで熟睡するための方法

ファーストナイト・エフェクトを回避するにはどうすればよいだろう?

じつにシンプルだ。生まれたばかりの赤ん坊を母親のパジャマで包むとその匂いを感じ、母親が不在でも安心して過ごせるというトリックがあるが、これと同じ原理だ。

旅行に、パートナーのTシャツ、あるいは自分の枕をもっていこう。よく知っている香りは安心感や守られているという感覚を与えてくれるので、慣れない環境でも違和感を覚えにくくなる。

スーツケースに枕を入れるスペースがなければ、お気に入りの枕カバーをもっていくだけでもいい。

多くの人が、旅先の慣れないベッドでの最初の夜だけでなく、より頻繁に、または連日のように睡眠の問題に向き合っている。

ベッドに入るやいなや、回転木馬のように思考が回りはじめる。「すべての仕事を期限内に終わらせられるだろうか」「今月も赤字だ」「自分は果たしてよい親だろうか」……。

ストレスと不安は、人が眠りにつき、休息につながるはずの深い睡眠に達するのを妨げる睡眠泥棒だ。

心配の対象が何であれ、脳は、私たちが生き残りをかけて日々戦っていた人類史の始まりの頃と同じように、まるでサバンナでバッファローの群れに追われているかのような反応を示す。生死に直結しなくとも、日々の悩みやストレスは私たちの脳を苦しめ、入眠と睡眠の維持を妨げるのだ。