怖さの元凶は「情報の非対称性」にある

この怖さの元凶は「情報の非対称性」にあります。

世界的な企業が自分のなにを知っているのか、ぼくらはほとんど知らないのに、あちらは詳しくぼくらのことを知っています。この状態で「絶対に悪いことはしないから」と言われても、信用できないでしょう。

このようなサービスばかりでは、人とテクノロジーの信頼関係は失われていきます。

よくわからない相手に、自分を知られるのは怖い。でも逆に、信頼している人には、自分のことをもっとわかってほしい。信頼できる相手と助け合って生きていきたい。

テクノロジーが「信頼できる相手」になるためにも、「だんだん家族になるロボット」は人とテクノロジーの信頼関係の象徴として、その役割を担う必要があるのです。

「ぼくらはいま、ドラえもんの先祖を造っている」

人類とともに長い歴史を生きてきた犬や猫、そしてLOVOT、そのさらに未来の世界では、ライフ・コーチングを目的としたドラえもんがぼくらのそばにいるはずです。

もしドラえもんが労働の代行を目的とするロボットであったなら、のび太のママのお手伝いを毎日マメにしているでしょう。

ところが、ドラえもんはたまにお手伝いをすることがあっても、頻度は決して多くありません。むしろ、ママから好物のどら焼きをもらって昼寝しているような、どちらかというと怠惰な存在です。ここからも、ドラえもんというロボットは、自らが生産的な活動をするのとは異なる目的の存在であることが垣間見えます。

そしてドラえもんは、なぜまるっこい猫型ロボットなのでしょうか。

その答えとして、「21世紀に開発されたペットのようにだんだん家族になるロボットが、ドラえもんに進化したから」という仮説は、いかがでしょうか。

林要『あたたかいテクノロジー』(ライツ社)

人類からの信頼を得て、人類のそばにい続けることを目的として生まれた祖先から進化したドラえもんだからこそ、まるっこい形を引き継いでいるのかもしれません。

「ぼくらはいま、ドラえもんの先祖を造っています」この言葉、ワクワクしませんか。

ぼくらはようやく、夢のロボットの手がかりを見つけたような気がしています。

「文明の進歩の先に、人類の幸せはあるのだろうか」

考え続けたその先で、いままでの生産性を上げるためのテクノロジーとはまったく異なるベクトルに、ドラえもんはいたのです。

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