「条件付き」の幸せ

結婚している人たちは、全グループのなかで――少なくとも主観的な意味では――間違いなく最も幸福で、最も孤独感の低いグループだ。しかし、この結論にも、2つの条件が付いている。

第一に、カップルの人たちは、幸福感、人生に対する満足感、孤独感の低さのどれをとっても数値が高めだが、彼らはそもそも結婚前からこのような数値が高めだという点だ。長期的な研究によれば、いつかは結婚する人たちというのは、そもそもの幸福感の基準ラインが約0.3ポイント高い(尺度は0〜10)(※5)

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この点を考慮に入れると、結婚していることが、高齢者の幸福感のレベルを上げ、孤独感を下げる程度は(この2つのあいだには強い相関関係がある)、あるとしても、非常に低いということになる。

結婚している人とそうでない人の「孤独」の差は小さい

第二に――これはより重要なことだと考えられるが――これらの調査結果は、第二次世界大戦中あるいは、戦後すぐに生まれた世代のものであるという点だ。

それを踏まえると、結婚の価値も持続性もますます下がっているこんにちでは、シニア期における孤独感に対して結婚が与える影響は、彼らより後の世代にとってはもっとマイナスのものになっているだろう。より若い世代にあっては、結婚期間は短くなりがちだし、別れる人たちも増えているからだ(※6)

また、離婚することが以前に比べてたやすくなっているからこそ、離婚者の数が増えているともいえる。多数の支援グループもあり、離婚という同じ境遇にある人も多いからだ(※7)

最近のピュー・リサーチセンターの調査結果によると、いわゆる「グレー(熟年)離婚」が急激に増加している。たとえば、アメリカの50歳以上の離婚率は1990年に比べると約2倍になっている(※8)

こうした離婚経験者たちは、すぐに「結婚したことのある人たち」という大きなグループの一部となり、結婚という選択肢をますます魅力のないものにしている。離婚者の増加は、「いつまでも幸せに」暮らしている人たちが減少したことを意味するからだ。

以上のような保留条件を認めるか、認めないかはともかくとして、結婚している人たちと結婚していない人たちのあいだの孤独と幸福の差は驚くほど小さい。