「普通の経営者」は何を伝えるべきか

話題をマスク氏のような「SNSに特化した広報活動」に戻そう。「普通の経営者」はSNSで何を発信すればいいのだろうか。

マスク氏は米国独立記念日にツイッターで「Happy Independence Day!」とツイートした。独立記念日を祝う挨拶のようなものだ。何の変哲もないこの挨拶に、2万を超える返信と60万以上の「いいね」が付いている。同様のことを「普通の経営者」がしても、誰も反応すらしない。これもマスク氏だからこそ、なのだ。

「普通の経営者」であれば、ツイートする前に、発信する内容の「掘り起こしと再編集」を行ってほしい。自分の会社での朝礼の感覚で、日々の活動報告や自分の経営哲学を誇らしげに開陳しても、誰も関心など向けない。

「SNSで自分を発信する」ということは、発信する内容の「掘り起こしと再編集」を独力で行わなければならないということだ。この作業は実は想像以上に難しい。昔から「灯台下暗し」などと言うように、経営者は事業のことは把握していても、自分自身のことは客観的によくわかっていないからだ。

まずは発信内容という「広報の軸」を確立する

「日本で既存メディアに最も出ている社長のひとり」が業界団体の集まりで話したという内容を知人から聞いて、私は「普通の経営者」の典型的な必勝パターンを見た思いがした。

その会合の出席者によると、その社長は「何度もメディアに出るうちに、記者やディレクターがどんな話を引き出そうとしているのか、完全に理解できるようになった」と豪語していたそうだ。この社長も最初は自社の魅力や第三者が求める情報を理解していなかったのだろう。だが、既存メディアの取材を受け続けるうちに徐々に自覚できるようになった。そして最終的に、第三者が支持・共感する自己像を確立できたということなのだ。

情報発信手段が多様になったことで、「どう伝えるか」という技術論に関心が集まりがちだ。実際、書店やネットを眺めてみると、「今、流行のSNSでの発信法」の類いは実に多い。だが、最も大切なのは「何を伝えるべきか」を確立することだ。マスク氏のような極めて突出した世界随一の実績までに至らない「普通の経営者」はSNSであれ、既存メディアであれ、まずは発信内容という「広報の軸」を確立することをお勧めしたい。

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