営業を切磋琢磨させる一方で、顧客情報は共有
マーケティングではWEBのコンテンツマーケティングをおこなうだけでなく、コールセンターを活用したMA/Marketing Automation:マーケティングの自動化が発達している。
WEBでのタッチポイントだけでなく商談会で集約した顧客名簿データベースが整備されているので、顧客がキーエンスのWEBサイトで商品資料をダウンロードすると、それがトリガーになってすぐにその顧客に電話し、用途を確認し、コンサルティング営業につなげる仕組みがある。
営業は直販体制で、値引きなし。SFA/Sales Force Automation:営業支援システムの活用で、引き合い→見込み顧客→案件化までをデータ収集し、AIを活用した顧客情報管理と実行管理を実施する。
営業のKPIは累積取引社数、取引に関わった人数、商談数、商談に関わった人数、訪問社数、はじめてアプローチした社数、電話の発信回数、電話の受信数、純粋な接触者数、キーマン施策とその影響変数、工場、現場への入場回数など実に細かく、「行動」ベースで設定され、SFAで管理される。
このプロセス重視のKPI化と評価手法によって営業は横並びで比較され、透明化されているので、切磋琢磨させて営業を育てる仕組みがある。特筆すべきは、このように比較されるにもかかわらず、上記の商談と顧客情報の共有があたり前の企業文化があることだ。これは他社では簡単に真似できない仕組みだろう。
上司の前で売り込みをロールプレイング
粗利目標必達のチーム員制度によるチーム内教育の強化もすさまじい。たとえば新製品の売り込みの会話を、台本をもとに徹底的にロールプレイングする。特に客先へ行く前に、その商品説明、質疑を上司の前でロールプレイングし、ダメ出しされると顧客訪問もキャンセルされる。他社でも営業ロープレはおこなうが、ここまでのしつこさ、回数で実施している事例は稀だ。
営業は顧客が表面的に口にするニーズのみならず、さらにその裏のニーズ、つまりインサイトを聞き取りする訓練を受けて、営業全員が毎月1つ以上「ニーズカード」にまとめ、SFAを通じて提出する。その内容は技術に対する知見を持った営業が、インサイトはもちろん顕在ニーズでさえ現行商品では叶えられないことに対する課題意識を反映して作成するため、キレがある。
商談終了後5分以内にSFAの営業報告書を記入し、それをもとに上司に報告をする。現場での勝ちパターンのナレッジシェアを徹底し、事業部を超えて案件紹介をしても、自分に報酬が返ってくるID制度がある。