子どもの教育や職業に関して両親にジェンダー差別がある

<解説>

ユカは自分の「好き」をもっています。科捜研に入るのが夢です。そして芯の強い子です。そのため、高校で居場所のなさを感じていても、また同級生から嫌味を言われても、へこたれずにがんばっています。そんなユカですから、ハズレガチャの影響は受けにくそうに見えますが、アタリガチャとも言えなそうです。では、どこがハズレガチャなのでしょうか。

まず、家にお金の余裕がないこと。これはタケシとツトムのケースもそうです。ただし、しっかり者のユカは、経済問題はクリアーできそうです。大学に行くためには、がまんも努力もできます。ですが、もし母親がユカの大学進学を妨害してきたら、どうなるでしょうか。ユカの親戚には、どうやら女子で大学に進学した人はいないようです。

また、パート以外の仕事をしているお母さんたちもほとんどいません。その理由はユカには分かりません。母親に聞いても、「そういうものだから」という返答しかもらえないからです。もし両親がユカに、「大学に進学するなら勘当する」と言ってきたら、ユカはどうするでしょうか……。

このケースでは、子どもの教育や職業に関して両親にジェンダー差別がある点が、ハズレガチャに相当します。

ケース4、リア充からほど遠い大学生活を送っているカズシゲ

カズシゲはユカの兄です。地元の私立大学に通っています。現在3年生で就職活動をしていますが、まだ内定をどこの企業からももらえていません。カズシゲは自分の通う大学が好きではありません。そもそも大学に行く気はなかったし、大学に行ってほしいという両親の期待に応えましたが、自分で希望した大学には不合格でした。第2、第3希望の学校も不合格だったので浪人して再チャレンジしたかったのですが、親からは「そんな金はない」という空気を感じました。結局、練習のつもりで受験した大学に入学しました。

そんなわけで、入学後も授業に出席するのは最低限の科目だけです。単位も十分に取れていません。カズシゲには特に就きたい職業や入りたい企業があるわけではありません。行きたかった大学も、カッコよさそうで、そこに行けばモテるかもという漠然とした考えがあったくらいです。現在までカズシゲには彼女はなく、親友と呼べる友達もいません。勧誘されたサークルに入りましたが、サークル活動に顔を出す機会も減っていきました。

写真=iStock.com/chachamal
※写真はイメージです

コミュニケーションが苦手なカズシゲにとって、就活は苦痛です。面接で何回か落とされました。将来のことを考えると、漠然とした不安感に襲われます。眠れない夜に家の冷蔵庫から持ち出した缶酎ハイを飲みながら、脳裏に浮かぶのはネガティブなことばかりです。