世界で最も人間の命を奪う生き物
――神谷さんは「ビオレガード モスブロックセラム」発売とともに、世界からデング熱被害を削減する「GUARD OUR FUTUREプロジェクト」を立ち上げました。これはどういう活動ですか?
【神谷】ご存じのようにデング熱は蚊が媒介するウイルスによって感染します。実は世界で最も人間の命を奪っている生き物は蚊なんですよ。世界で毎年約75万人が蚊が原因の感染症で亡くなっています。ただし、このうち60~65万人くらいはマラリアによるもので、デング熱が原因で亡くなった方は2万~3万人くらい。しかしデング熱を媒介する蚊が住めるエリアが、地球温暖化でどんどん北半球のほうに広がっているんですね。
マラリアの蚊は自然のなかのきれいな水でしか生きられないので、都市にはあまりいない。一方デング熱の蚊は、汚い水やコップの水くらいの水たまりでも生きられる。したがって今後デング熱は世界128カ国、39億人、地球の人口の半分に感染のリスクがある感染症になる可能性があります。
しかし現状では政府も生活者も十分に対策ができているとはいえず、蚊よけの商品をつくっただけでは、デング熱は完全になくならない。それよりも啓発活動によって生活者の予防意識を向上していくことが重要なので、このプロジェクトを発足させました。
新商品の浸透には時間がかかる
【神谷】これは花王一社だけでできることではないので、商品を販売しているタイにおいて現地の得意先の流通業と共同で売り上げに応じて学校や病院に商品を寄付したり、デング熱のワクチン開発に取り組んでいる武田薬品さんと共催でイベントを開いたりしています。またタイの国立電子コンピュータ研究所(NECTEC)と弊社の研究・IT部門が一緒になって、デング熱予測モデルの開発に取り組んでいます。
企業のESG、CSR活動というのはキャッシュアウトが多いイメージがありますが、少しでもサステナブルになるように、活動自体がその原資を生むようなモデルを目指しています。ですから売れゆきも大事です。すでに強い商品があるカテゴリへの新規参入は簡単ではありませんが。