テレビだと自分たちの首を絞めるブツが出てきた

――映画制作に入る以前は内山さん自身、安倍晋三という人物に対しては、二度に渡る総理在任中からどういう思いで見て来たのでしょうか。

テレビマン内山監督が硬派なドキュメンタリー映画を作った経緯を聞く木村元彦氏。(撮影=増田岳二)

【内山】森友、加計、桜の疑惑があって、ところがそれが捜査も含めて何も事態が進まないという気持ちの悪さはずっと感じていましたよね。もう6、7回政権がふっとんでもおかしくないスキャンダルの連発なのに、なんでこの人はこんなに選挙に強くて人気があるのかそれがわからない。

そして驚くほど責任を取らないというのが、ずっと続いていた。謎を解明したいという気持ちがあって、まず「なぜ安倍政権が選挙に強いのか」という角度から入ろうとしました。

ところが、いろんな材料が揃えにくかったんで、だったらメディア論はどうかといくつか当たった中で、自民党が持っている放送局へ圧力をかけるペーパーだとかのブツ(証拠)が出てきました。このネタはテレビだと自分たちの首を絞めることになるからできないのがわかっていたので、これはいけると思ったんですよね。

――論評的なインタビューは小林節さんぐらいで、あとはもうファクトに対して、それをぶつけた上でのインタビュー。欲しい言葉のポイントとして聞き込んだ部分というのは、どういったところでしょうか。

【内山】木村さんらしいドキドキする問いですね。インタビューは、聞いていてある程度ニュアンスは分かっているのに、敢えて「えっ!? どうしてですか、それ?」と相手の強い反応を狙ったり、古賀さんが聞き手で官僚の人たちに質問しているシーンも、官僚同士では前提になっていてそのまま流される部分も横から「それ、もう1回お聞きしたい話なんですが」とか「文書改ざんの立場に陥った場合は、皆さんならどうしますか」とかしつこく引き戻したりしました。そこは、わかりやすくするための、テレビ的スキルを活用しました。