憲法上、解散の大義とは何か
「解散権は総理の専権事項」である。憲法7条において、解散は、内閣の助言と承認により天皇が行う国事行為のひとつと位置づけられている。つまり、総理が「解散!」と言えば、解散できるということであり、戦後20回以上行われてきた解散は、この憲法7条に基づくものである。
憲法69条にも解散の規定があり、「衆院で内閣不信任決議案が可決されるか信任決議案が否決された場合に、10日以内に衆院が解散されない限り内閣総辞職をしなければならないと定める」とされている。
憲法69条によるものは、第1回「馴れ合い解散」(1948年)、第3回「バカヤロー解散」(53年)、第12回「ハプニング解散」(80年)、第16回「政治改革解散」(93年)の4回しかないとされている。
そもそも、与党が多数である衆議院において、内閣不信任決議案が可決されるということは、与党からの造反者が出なければできないことであり、特に小選挙区制度が導入されて以降は、与党所属議員にとって、不信任決議案に賛成票を投じるのは至難の業である。
なぜなら、選挙の際の党公認権は党総裁である総理にあり、その総理率いる内閣に対する不信任決議に賛成するということは、党の公認なしに解散後の選挙を戦うことになるかもしれない覚悟が必要だからだ。
戦後のほとんどの選挙が「総理の専権事項」で行われてきたのであり、大義うんぬんは、果たしてどの程度あったのか。という疑問が浮かぶ。憲法上は、憲法7条が解散の根拠であり、この根拠こそが大義となり、それ以上でもそれ以下でもないではないか。
小泉純一郎元総理(81・在任期間2001年~2006年)の2005年の「郵政解散」は、「郵政民営化に賛成か、否か」という一点について、世論に問うという「大義」があったとされるものだが、衆議院では可決された法案が参議院で否決されたことを受けてのものであった。衆議院では法律が可決されたのだから、そこに民意は表されており、参議院は6年に1度民意を問う選挙が実施されるという制度上、参議院で否決されたからといってそこで衆議院を解散する「大義」はあったかどうかという点については疑問が残る。あの「郵政選挙」でさえである。
また、安倍晋三元総理の実施した2014年の「消費税延期」選挙も、2017年の「国難突破」選挙も、その際の解散の大義とは何だったかをしっかり語れる人はどれだけいるのだろうか。